2011年05月16日

訓練日誌 あとがき


皆さん、こんにちは!
今回を入れて30回にわたるえらく長い“訓練日誌”は、本日をもって終了です。
6月にずれ込むこともなく、なんとか書き終えることができて、今はホッとしています。
私だけが安堵しても仕方のないこと、アイメイト協会での歩行指導について、少しだけでも皆さんにご理解いただけたのだろうか、一抹の危惧を抱きつつ、今回の記事を書いています。
アイメイト協会最寄駅で担当指導員のSさんと別れ、私とトリトンは自宅のある埼玉県I市に向けて出発しました。
と言っても、自宅の最寄駅には私の奥さんが迎えにくることになっていましたから、電車を一度だけ乗り継ぐ行程が二人の初仕事でした。
ドアを探し、空席を探し、乗換駅では階段を探し、そして、改札を探す。
私とトリトンは、これら一つ一つの仕事を力を合わせこなしながら、少しずつ自宅最寄駅に近づいていきます。
後ろから私達を見守ってくれたSさんがいないという事実は、私の心を寒くしていました。なんというか、風通しが良すぎるんです。
そんなことでは先が思いやられてしまいますが仕方ありません、若葉マークを貼ってもらったばかりの超初心者なのですから。
なんとか二人で自宅最寄駅に到着、しばらく待っていると地響きを立てて私の奥さんが右後方から参上。
トリトンがレインコートを着て改札口の方を向いてスィットしている後ろ姿が今でも目に焼き付いていると、当時を振り返り彼女は語ります。
さあ、わが家に向けて出発です。
白杖を使っていた頃は避けていた家までの最短コースで帰ることにしました。
私の奥さんに指導員の代わりを務めてもらいます。
後ろから指示を出してもらいながら少しずつ前進しますが、やはり、本職の指導員のようにはいきません。
3年経過した今でこそ、お互いにずいぶん慣れてきたので後ろからの指示を信じて歩けますが、初めの頃は、ほとんど喧嘩しながらの歩行の日々でした。
そんな私達のやり取りを聞きながら歩くトリトンも、ものすごく歩きづらかったことでしょう。
あの時は申し訳ないことをしたなと今頃反省しても遅すぎて、トリトンにはなんのことを言ってるんだかわけわかりませんよね。
でも、初めてトリトンと家に帰った時のこと、私は今でもくっきりと覚えています。
家に帰る途中、一カ所だけ川にかかる木の橋を渡ります。
この日の天候は雨、しかも、未明から降り続いているため川の水位も高く、流れもとても速いものでした。
トリトンにとって、そんな不気味な音や景色、今まで経験したことはなかったのでしょう。
「こんな恐ろしいところ歩けるわけないじゃないか、一体なんで僕はこんなところに連れてこられたんだろう?」
そんな声が聞えてきそうな怯えた態度、思わず後ろに飛び退いてしまうではありませんか。
そんな態度に、トリトンと同じ目線に姿勢を低くし、私は彼を一生懸命なだめたものです。
その効き目があったかどうかはわかりませんが、なんとかその橋を渡りきり無事にわが家に到着したのです。
二度目からは、なんの抵抗もなく渡ってくれたその橋、今でもそこを通る度にその日の光景を思い出しては懐かしんでいます。
家の玄関の外では、トリトンの帰りを心配して、今は亡き私の奥さんの母が待ちきれない様子でソワソワ、ウロウロ。
濡れたトリトンのレインコートや体、そして私自身の体をタオルで拭き室内へ。
ここでもトリトンは落ち着かない様子、すべての匂いを嗅ぎ取るように大きな鼻息を何度も何度も繰り返し、今度はどこに連れてこられたのか、それはそれは不安そうな態度をみせていました。
リビングに移動し、トリトンのために用意しておいたハウスに連れていき、そんな彼の不安を少しでも取り除く努力もしました。
時の流れと共に、私、家族、そして、トリトンも徐々に環境に慣れ、今ではトリトンが中心となり、わが家を温かく包み込む大黒柱のような役目を果たしてくれています。
昨年の秋、ふとした切っ掛けでトリトンの飼育奉仕をしてくださったご家族をご存じの方とお会いする機会に恵まれ、その方のご尽力によって私達は直接連絡をとれるようになりました。
初めていただいたメールの内容に私は胸が熱くなりました。
銀座で行なわれた卒業試験に飼育奉仕の方がいらしていたことは、アイメイト許可証を手渡された時に理事長からうかがっていましたが、直接その時のお話しをメールで知り、私の愚かさに愕然としたものです。
アイメイト協会から連絡を受け取った飼育奉仕の方(ここではBさんと記させていただきます)は、お子さんを伴いテストが行なわれる銀座に。
ロクシタンが入っている銀座シルクビルの横から私とトリトンが歩く姿をご覧になっていたそうです。
横断歩道で停止するトリトンを見て感動されたこと、カレーレストラン“ナイル”の2階で昼食を摂っている時は、1階のフロアで食事をされていたこと、帰り道、地下鉄に入る私達を迷惑がかからないようにと遠くから見送ってくださったこと、その時、トリトンと目が合ったけれど、完全に無視して動揺することなく私と立派に歩いていたこと、トリトンと私の心が一つになったのだと思って誇らしく感じていらしたことなどなどがつづられていました。
その後、トリトンが今どのように過ごしているのだろうか心配で、ネットの検索ボックスに「トリトン」と入れてみたりしたそうです。
でも、私は自らの知識不足、努力不足からトリトンに関するブログやホームページを作っていませんでしたから、「トリトン」の用語にヒットするアイメイトのページなど出てくるはずもありません。
いただいたそのメールを読み終え、私は冷水を浴びたような感覚に襲われ、自らの過ちに気付かされました。
“トリトンと歩む道”の立ち上げの大きな切っ掛けを作ってくださったBさんには、あらためてお詫びし、同時に御礼申し上げます。
また、この“訓練日誌”の掲載の踏切に際し、私の背中を押してくれた、いつも温かいコメントをくださるOさんに厚く御礼申し上げます。
そして、私がアイメイトと歩くためにたくさんのことをご教示くださったアイメイト協会、ならびにスタッフの皆さん、できの悪い生徒の私を担当しなければならなかったSさんに心より御礼申し上げます。
トリトンを通して知り合いになった地域のケーブルテレビのKさんという女性に先日無沙汰をお詫びするメールを出しました。
そのメールの中に“トリトンと歩む道”のブログもしっかりと宣伝させてもらいました。
後日、返信メールをいただきました。
その中に書かれていた内容で非常に印象に残る記述がありました。
以前、Kさんも仕事の関係でブログを立ち上げたそうです。
最初の頃は読者の人数に一喜一憂していたそうですが、ある程度記事がまとまってくると、自分にとっていい記録になっているなと感じたそうです。
私は今でも読者数を気にするひ弱なところから脱出できていませんが、確かに自分にとってのいい記録であり、これは一つの財産かもと感じ始めています。
貴重なアドバイスをくださったKさんにも、この場をお借りし御礼申し上げます。
協会で受けた歩行指導、ユーザーそれぞれがそれぞれの異なったドラマを経験していることでしょう。
ドスコイノブの訓練日誌は以上です。
皆さんの感想をお待ちしています。
最後になりますが、現在3頭目のアイメイトユーザーの先輩、松井進さんが今年1月に出版した著書をご紹介し失礼いたします。
書名:盲導犬の訓練ってどうするの? 視覚障害当事者の歩行訓練体験記
著者:松井 進
発行・発売:生活書院
  〒160-0008 東京都新宿区三栄町17-2 木原ビル303
  TEL03-3226-1203 
  FAX03-3226-1204 
  mail:info@seikatsushoin.com
判型:四六判並製/144頁
定価:1470円(税込)
ISBN978−4−903690−64-3
本書の概要
本書の中で、私たちアイメイトの使用者が犬たちとどのように出会い、どうやって信頼関係を築いているのか、その軌跡をご紹介したいと思います。
 私にとってアイメイトは目の代わりであり、身体の一部ともいえる存在です。彼らの献身的な協力のおかげで、私は仕事を持って経済的に自立し、ボランティア活動をし、家庭生活を営み、余暇を楽しみ、社会に参加することができるのです。
なお、念のため申し添えますが、これはあくまでも私の個人的な体験談であり、すべての視覚障害者に共通するものではありません。
最後に、私の取るに足らない体験が、盲導犬と人との関係についての理解を深める一助となれば幸いです。
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2011年05月15日

訓練日誌 29日目 “卒業”


皆さん、こんにちは。
今回は、3年前の5月10日(土)に行なわれた卒業式の様子をご紹介します。
晴れの卒業式の天候は残念ながら雨、アイメイト協会の卒業式は晴れの特異日と言われているだけに、それがかえって私達に強い印象として残り、今もその日を容易に思い出すことができます。
考えてみれば、この四週間でずいぶんたくさんのことを詰めこまれました。
6回にのぼる歩行テスト、犬の健康管理など、次から次へ容赦のない攻撃に耐えながら自らの体内に吸収していく行程は、私のような怠け者にとって限界の連続だったように思います。
しかし、トリトンと出会ったことで、彼を絶対に連れて帰るという気持ちが芽生え、日を追うごとにその思いは強さを増し、日々の厳しい訓練にも耐えられる力を私に与えてくれたのだと思います。
【5月10日(土) 雨
朝から雨が降り続いている。
起床後、ワンツー、そして朝食を摂った。
この食堂に足を運び、担当指導員、クラスの仲間と集うのも今回で最後、なんとなくしんみりした気持ちになるのは俺だけだろうか。
アイメイト協会、362期、363期の卒業式が目前に迫っている。
式が始まるのが10時、それまでの時間を利用して居室の大掃除を始めた。
掃除機を借りてフロアを隅から隅まで丁寧に、トイレもできる限り綺麗にしたつもりだ。
深い睡眠をくれたベッドも、そして、大きな窓も拭いた。
パソコンの電源を抜いてバッグに入れる。段ボールに詰めた荷物は自宅に送ってもらうよう手配した。
多分、やり忘れていることはないだろう。
さあ、世話になったこの居室ともしばらくはお別れだ。心の中で別れの挨拶をする。
この日、仕事の関係で式に出席できない職員が一人ずつ居室を訪ねてくれて卒業を固い握手で祝ってくれた。
もう一つのクラスの担当指導員であり指導部長であるKさんも大きな声で卒業を祝ってくれた。
しばらくすると、集合の合図がかかり、俺達は3階の会議室に向かった。
トリトンにハーネスを装着しハンドルを握る。
彼が俺の左側にいつもいてくれるのが当たり前になりつつある今がなぜか不思議に思えた。
たった四週間前にはなかった温かさが今こうしてすぐ傍に感じられる。
トリトンを家に連れて帰って本当にいいのだろうか。
ここで学んだことが俺の頭に、そして体にきちんと植え付けられたのだろうか。
そんな得体の知れない不安のような感情を抱きつつ、俺は居室のドアを開け3階に向かった。
会場は協会職員、来賓、生徒の家族など結構な数の人々で埋めつくされていた。
自分のクラスと、もう一つのクラスの生徒達とアイメイト、5人と5頭が部屋の中央に、前列にこちらを向いて協会職員、生徒達を囲むように来賓が位置し理事長の挨拶が合図のように卒業式は始まった。
ライオンズクラブなどの来賓による挨拶、祝辞の披露、続いて、担当指導員の挨拶と流れるように式は進められていった。
俺の担当指導員のSさんからの挨拶、それに続いてクラスの仲間が順に挨拶を述べ始める頃になると、訓練を受けていた時の様々な光景がグルグルと渦を巻くように自分の脳裏を駆けめぐり、抑えきれない感情が一気に高まり、自分の理性は姿を消し去り、体の中心に火がついた。
それは上昇し、胸を内側から締め付け、喉を熱くし、鼻の奥をツンとさせた。
刹那、俺の見えない両の目頭から涙が溢れ出し、それは止めどなく次から次へ頬を伝わり顔面をグシャグシャに濡らした。
ついでに鼻水もそれに仲間入りし、俺の体から水分が放出されていった。
幸いにして、ちびることはなかったが、予測もつかない自分の感情の動きに俺自身が驚き、自分の番になっても言葉が出ない、いや、声すら出てこない有様、
『一体全体俺はどうしちまったんだろう』
結局、口にできた言葉は、
「ありがとうございました」の一言だけ、なんとも無様な姿を大勢の前で披露してしまったのである。
クラスの仲間の挨拶が終り、最後には協会職員、来賓の方々が訓練生一人一人の前に立ち次から次へ祝福の言葉と握手攻撃。
もうこうなると、俺の涙はほとんどダムの決壊状態、どうにも手がつけられない、誰にも止められないといった始末。
見かねたインターンのKEちゃんがティッシュを手渡してくれたので、ありがたく受け取り鼻をかみ、涙を拭き、もう一度鼻をかみ、なんとかその場をしのいだ。
卒業という代物は今まで何度も経験しているが、これほど俺自身を感激させたものは初めてである。
四週間という短い期間ではあったが、これだけ一つのことに夢中になれたこと、常に緊張感を保ち続けたことが今までにあっただろうか。
そんな張り詰めたものがプツリと音を立てて切れた瞬間、安堵と充足感が俺の体内を埋め尽くし、それは涙という形に化けたのかもしれない。
“ありがとうございました”のありふれた言葉を、心の底から言えたのは、もしかしたら初めてかもしれないし、これだけ感謝の気持ちを素直に心の底から抱けたのも過去にはなかったかもしれない。
互いに同じ目的をもち、励まし合い、四週間に及ぶ生活を共にした仲間と再会を約束し、協会玄関前で別れた。
朝から降りしきる雨、アイメイト協会の卒業式には珍しい天候ということで気温もかなり低い。
昨日届いたばかりのレインコートをぎこちない手つきでトリトンに着せる。
その後、担当指導員のSさんが駅まで車で送ってくれた。
切符を買い、改札口に向かう。
四週間世話になったSさんともここでお別れだ。
礼を述べ握手を交わす。
トリトンに「かいさつ」の指示を出す。
「かいさつ、グッド!」
投入口に切符を滑らせる。
トリトンと一緒に改札口を通り抜け、もう一度後ろを振り返りSさんに深々と頭を下げる。
『戻りたい、もっとおしえてもらいたい、協会に帰りたい』
そんな気持ちが急にこみ上げてくるが、それを振り切って改札口に背中を向けた。
俺が握るハンドルを通してトリトンの動きが伝わってくる。
立ち止まる俺の様子をうかがうように彼がこちらを向いたのだ。
『そうか、今俺は一人じゃないんだ。これからずっとトリトンが傍にいてくれるんだ』
今からが二人にとっての本当のスタートだ。
俺は前方に向けて右手を静かに伸ばし、トリトンに指示を出した。
「ゴー!」】
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2011年05月14日

訓練日誌 28日目


皆さん、こんにちは。
本日は、3年前の5月9日、金曜日の日記をお届けします。
昨日の“銀座歩行”、アイメイトの卒業試験を二クラス全員が無事に合格し、ホッと胸を撫で下ろし、さあ卒業式と思いきや、最後の最後にもう一つの難関、“幻の卒業試験”と証する、これまたアイメイト協会恒例の謎めいたテストが控えていました。
このコース、先にも記した通り、アイメイトも歩いたことのない、もちろん、使用者も初めての道のり、前夜のミーティングである程度詳しい説明はあったものの、二日連続で未知の世界に足を踏み入れるという、今までの訓練とは大違い、社会復帰に向けてのかなり実践的な取り組みと言えるでしょう。
“幻”と名付けられたこのテスト、今までの五つのテストのように、コースの概略をご紹介することはあえて控えさせていただきます。
ただ、今まで経験していなかった歩道橋を利用する道路の横断があり、その位置が少しわかりづらいということだけを付記しておきます。
これからアイメイトと一緒に歩きたい!とお考えの視覚障害者の方は、協会には内緒でこっそり教えますので手紙をください。
では、アイメイト協会で過ごす残り少ない生活の続きをどうぞ。
【5月9日(金) くもり
今日と明日の二日間を残して、ここでの生活を終えようとしている。
トリトンの体調もいいようだ。今朝は、大量のツーもしてくれた。
俺もまずまずといったところか、この四週間、大きく体調を崩すこともなく元気に過ごすことができた。
本日は午前中に最後のテスト、“幻の卒業試験”があり、午後には理事長直々による面談があり、アイメイト使用者証が俺の手に渡されることになる。
夜は明日の荷造りや掃除などで忙しくなるだろう。
明日の昼前には協会を出発し、自らの家にそれぞれがアイメイトを伴って戻っていく。
そして、明日からは自分の後ろを指導員は歩いてくれない。適切な指示も与えてはくれないのだ。
すべて自己責任の元、犬をコントロールし、日常の健康管理にも気を配っていかねばならない。
四週間だけの訓練で本当に大丈夫なのだろうか?
これで帰ってしまって本当にいいのだろうか?などの不安も多い。
しかし思い返せば、ここで様々なことを学んだ。
これだけ短期間で何かを身につけるために学習したのは、もしかしたら、自分の人生で最初の経験ではなかろうか、と共に、本当に貴重な時間を過ごせたという満足感が体の中からあふれ出る。
仕事を休んでまで来たことに全くと言っていいほど後悔はない。
「やった!!」
トリトンが完璧な仕事をしてくれた。
もちろん、最終試験の幻のコースのことを言っている。
間違えた場所も皆無で、歩道橋の階段も一発で教えてくれた。
スピードも快適なもので、俺をどこにもぶつけずにゴールしてくれたのである。
これぞまさしく、有終の美を飾るにふさわしい歩行と言っても過言ではないだろう。
午前8時半、協会の車でテストが行なわれるスタート地点へと向かった。
5人中最後のスタートとなる俺は順番を待つ同期生と共に車内で待機していた。
晴天に恵まれた昨日とは異なり、どんよりとした曇り空、気温も低い。
一人一人無事にゴールし、いよいよ俺の名前が呼ばれ、車外に降り立った。
担当指導員のSさんと一緒に歩く。
『一体どれだけの距離を彼女と歩いてきたのだろう』
そんな回想にふけっている間もなくスタート地点に到着。
「行ってらっしゃ〜い!」
Sさんの明るい声に見送られ俺とトリトンはアイメイト協会で受ける最後のテストに臨んだ。
その“幻の卒業試験”を無事に終えて協会に戻ってきた。
午前中の予定はこれですべて終了だ。
今は昼食を首を最大限に長くして待っているところだ。
Mさんの手料理も残すところ2回、じっくりと味わいたい。
昼食後、トリトンのワンツーに出し、現在は居室で理事長からの卒業合否の判定を待っているところだ。
362期のわれわれの中でHさんが最初に呼ばれた。
そして俺の番がきて名前を呼ばれた。
トリトンにハーネスを装着し、居室を出て3階の会議室に向かった。
3階に到着、左に進むよう指示を出し、続いて左のドアを命じる。
「ドア、グッド」
軽くドアをノックした。
「はい、どうぞお入りください」
ドアを開けて中に入り、少しだけ右へ歩を進ませる。
正面に机があり、向こう側の中央に理事長、左にK指導部長、右に担当指導員のSさんが座っている。
机を挟んで理事長の向かい側に椅子が置かれている。
「チェアー」
でトリトンに空席を探すよう指示を出す。
すかさず、その椅子に顎を乗せて俺に教えるトリトン、
「チェアー、グッド」
その椅子に腰をおろし、トリトンを伏せさせ、理事長が発する言葉に耳を傾ける。
「アイメイト協会での全ての課程を修了しました」
俺とトリトンの卒業が決定した瞬間である。
評価の中に、少し犬に甘いというものがあり、叱ることと賞めることの減り張りをつけることが重要との指摘を受けたが、その他に今のところ問題はないということだ。
また、トリトンの飼育奉仕者をしてくださった家族、お母さんとお子さん達が昨日行なわれた銀座の卒業試験にいらしていたことを教えてくれた。
成犬になるまで愛情を注ぎ続け育ててくれたご家族の方々にはなんとお礼を申し上げてよいのか、言葉でうまく言い表すことができない。
ただただ、ずっとトリトンと一緒に歩いていくこと、ご家族に負けないくらいの愛情を傾け彼に接していくことが、それに報いる唯一の手段ではなかろうか。
トリトンの性格を見ていれば、どれだけ可愛がってくれていたのかが手に取るようにわかる。
できれば、近い将来、お互いに連絡を取り合い、末永くトリトンを皆で見守っていきたいものだ。
最後に、アイメイト使用者証を手渡され、理事長、K指導部長、Sさんの順で握手を交わし、
「おめでとうございます!」の言葉をいただいた。
会議室をあとに居室に向かうトリトンの足どりは、なぜか自信に満ちた力強さを感じさせてくれるが気のせいだろうか?
頼んでいたトリトンのレインコートが出来上がり、ボランティアの女性が居室を訪ね、直接手渡してくれた。
早速、トリトンにそれを着させ出来上がりの状態をチェック。さすがはオーダーメイド、体にぴったりフィットしている。
ダスターコートについては、これから作業に入るということ、出来上がり次第自宅に送ってくれるらしい。
さて、コーヒーでも煎れて、ゆっくり嬉しさを噛みしめることにしよう。
と、その時、全員食堂に集合との合図がかかった。
ドッグフード、シャンプー、ベッドチェーンなどの注文、同窓会への入会手続き、狂犬病、7種混合ワクチン摂取済みの書類やクラスの集合写真、歩行中の写真などの配布など、卒業に向けて慌ただしい時間が流れた。
3日分のドッグフードも頂戴し、フード用の計量カップもいただいた。
そして、現在、居室にはトリトンの姿はない。
彼の歯石の除去、爪切りなどを担当指導員のSさんが行なってくれている。
また、ハーネスに卒業ナンバーも刻印されるということだ。
ちなみに、トリトンの卒業ナンバーは、1046号である。
しばらく待っていると、Sさんに連れられてトリトンが帰ってきた。
さて、トリトンの食事も終わり、ワンツーにも出した。
協会では最後となる風呂にも入った。
しばらくすると、協会での最後の晩餐である。
現在少しずつ荷造りをしている。
ここに来た時に突いていた白杖も必要なしと判断し段ボールにしまい込んだ。
現在時刻、午後7時30分、最後の夕食を終えて居室に戻っている。
訓練生のみで8時に食堂に集まる約束をしている。
クラス全員の連絡先を交換するためだ。
現在は居室に戻り、協会で煎れる最後のコーヒーを飲みながらこれを書いている。
食堂に集まったわれわれの話の中で、10月末に同期会を実施することも決定した。
隣のクラスのNさんが所有する蔵王の別荘でというところまで話は具体化した。
約半年後、同じ釜の飯を食った仲間が再度集まって顔を合わせる。なんて素敵なことだろう!
さあ、荷造りもほぼ完了した。
アイメイトを持つ決心をし、この協会での共同訓練に入り、同じ志を目指す4人の仲間とも出会えた。
協会職員の皆さんにもずいぶんお世話になった。
一つ一つを書き出せばきりがないほど、ためになること、面白い話し、様々な出来事があった。
明日の卒業式、もしかすると感無量で涙が出てしまうかもしれない。
それほど、この四週間は、俺にとって思い出深い大切な時間となったことは言うまでもない。
協会での日記は、今夜が最後になる。
何一つ忘れてはいけないと、何でもかんでも書き残した文章の数々、誤字や脱字も含めてかなりの量にのぼる。
いずれ、この日記を紐解くこともあるだろうが、その時、俺とトリトンは今と同様、二人で元気に歩いているに違いない。そう信じている。】
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2011年05月13日

訓練日誌 27日目


皆さん、おはようございます。
さあ、やってまいりました、運命の卒業試験“銀座歩行”の当日です。
アイメイト協会に泊まり込んでの訓練の集大成と位置づけられている本日のテスト、今まで習ってきたことを駆使してアイメイトをコントロールし、二人で力を合わせて、東京の真ん中、銀座の人ごみを歩くという晴れの日を無事に迎えました。
最初にお断りしておきますが、今回の記事は滅茶長いです。
約5000字、原稿用紙に直せば12枚、2回に分けて掲載しようかどうか迷いましたが、一気に走ることに決めました。
さて、私とトリトン、どのような結末を迎えることになるのか、どうぞご覧ください。
【5月8日(木) 晴れのちくもり
午前1時45分頃、少し強い地震があった。
あわてて枕元に手を伸ばし、携帯ラジオのスウィッチを入れた。
この時の揺れは震度4と伝えられているが、トリトンは、何にもなかったように寝入っており、そんな彼の様子から大きな被害につながることはないだろうと勝手に解釈し再び睡魔の誘惑を素直に受け入れた。
午前6時に起床。
今朝は昨日に比べると涼しく、“銀座歩行”にも最適の陽気と言えよう。
先ほど、担当指導員のSさんが居室を訪ね、アイメイトである印のプレートをトリトンのチェーンカラーに装着してくれた。
このプレートには人とシェパードをシルエットに象ったロゴマークが記されており、モデルになったのは、塩屋賢一会長と国産盲導犬第一号のチャンピィとのこと、また、その下にはアイメイトの卒業ナンバーを刻むためのスペースが設けられているという。
裏側には、アイメイト協会の住所や電話番号などの連絡先が刻印されている。
いよいよ、トリトンが自分のアイメイトになりつつあるという実感を抱かせてくれる一瞬である。
卒業試験と位置づけられている“銀座歩行”、無難に歩いてゴールすることだけを念頭におき、満面の笑みで担当指導員のSさんからの祝福を受け止めたい。
朝食を摂るために食堂に行ったが、やはり、本日は、いつもと協会内の雰囲気もどことなく違うような気がするが気のせいだろうか。
9時過ぎに協会を出発するという。
地震で起こされたが睡眠は十分、体調も万全だ。
さあ、何を着ていこうか。銀座と言うことだし、いつものジャージ姿ではうまくないだろう。
かと言って、他にこれという洒落た服もない。
仕方ない、訓練に入る時に着てきたもので勘弁してもらおう。
靴は、いつも歩行練習で履いている者でいいだろう。
帽子もかぶった。髭も剃った。ついでに髪の毛も剃った。
おっと、ティッシュとハンカチを持たなくては。
よしっ!忘れ物もない。俺は完璧だ。
1階に下り、トリトンのワンツーを済ませた。
同期の訓練生、そして、もう一つのクラスの訓練生も皆集まっている。
各自パートナーの基礎訓練も終え、2台の車に便乗し協会をあとにして大都会、東京のど真ん中、銀座に向けて出発である。
それから約7時間後、4時前には協会に全員が無事戻ってきた。
何から話せばいいだろう。順を追って記すことにしよう。
まず、9時過ぎに協会の車で吉祥寺駅まで移動した。
俺が乗った車の助手席には理事長も同席し、計8人で賑やかな車内、しかし、緊張のせいか自分の口数は少ない。
吉祥寺駅からは一人ずつ指導員がついて中央線ホームに移動、有楽町を目指した。
俺についてきてくれたのは担当指導員のSさん、なんとも心強く温かい。
4番線に入線した電車に乗車、終点の東京駅を目指す。
車内は以外に込んでおり、、しばらく立っていたが、途中からは椅子に座ることができた。
左右の乗客の邪魔にならないよう、トリトンを自分の股の間に前を向くように伏せさせた。
やがて終点の東京駅に到着、ホームに降り立ち、山手線に乗り換えるためエスカレーターで1階まで下った。
そして、5番線の山手線で有楽町へ。
その有楽町駅では、本日の訓練を撮影するテレビ局のスタッフと合流、一人ずつ挨拶を受けた。
今回の撮影はドラマの最初と終わりの部分に訓練生が歩行練習をしている場面を挿入するというものらしい。
銀座口から晴海通りに出て銀座四丁目まで全員が移動した。
そして、ついに運命の卒業試験が始まった。
出発地点は銀座和光前、一人ずつ時間をずらして京橋方面へ向けて出発、俺は5人中4番目のスタートとなった。
コースに関しては、昨夜のミーティングで詳しく説明を受けていたので、普段通りに歩けば無事にゴール地点に帰り着くはずだった。
まずは1本目の銀座三丁目、次は2本目の銀座二丁目、続いて3本目の銀座一丁目の交差点を無事に渡り、そして4本目の銀座通り入口のストレートコーナーにつけた。
たくさんの歩行者で賑わう銀座の街をトリトンと二人で今確かに歩いている。
しかも、俺をどこにもぶつけず縫うように歩調も軽やかに。
自然にこぼれ出る「よーし、よし、グッド、グッド!」の声は都会の喧騒にも負けないほど、大勢で賑わう銀座の街に高らかに響いていた。
このコーナーを渡らずにバックしレフトコーナーにつけて銀座通りを横断する。
「ごー、レフトコーナー」
トリトンが俺の指示に従いバックして左のコーナーにつけて停止した。
その後、、おもむろに右足を前に滑らせる。
「あれっ、おかしいな」
俺の足先に感じるコーナーの段差が異常に高い。
横断歩道であれば滑らかにカーブしながら下がるはずなのにどうしてだろう?
もう一度先ほどのストレートコーナーに戻って同じ動作を繰り返した。
しかし、トリトンが俺に教えてくれるコーナーはさっきと同じように約20センチほどの高さの急激な段差である。
しつこく、再度同じ動作を繰り返したが、結果は同じ、しかも、信号待ちをしている歩行者の気配もまったく感じられない。
せっかくここまで順調にきたのになんということだ。俺は焦りだしていた。
だが、ここで俺が心を乱してしまえば、それはトリトンにまで伝わってしまうことになる。
しばらく立ち止まり頭の中を整理することに。
そして、俺は動いた。
もう一度ストレートコーナーに戻るようトリトンに指示を出した。
何人かの歩行者が信号待ちをしているのを確認した後、
「すいません!ちょっとお聞きします」
俺の問いかけに一人の男性が返事を返してくれた。
「ここは銀座通り入口の交差点でしょうか?」
「ここは違いますよ。1本後ろの交差点が銀座通り入口になります」
『そうか、俺達は1本コーナーを行きすぎていたんだ』
自らの過ちに気付き、すべてを理解した俺は、
「ありがとうございます!助かりました」
男性に礼を述べ、続いてトリトンにバックを命じた。
1本目のストレートコーナーを横断し、すかさずレフトコーナーを指示する。
信号待ちをしている人々の間をすり抜け、トリトンは滑らかな段差に俺を確実に導いてくれた。
「コーナー、グーッド!!」
信号の変わり目を捕らえ、「ストレート」の声符と共に俺達は銀座通りを横断した。
右に方向を変え、1本、2本、3本のコーナーを無事にやり過ごし、4本目のダウンコーナー、そう、みんなが待つゴール地点に向けてその距離を狭めていった。
トリトンが徐々にスピードを落としていく。ゴールはもうすぐ目の前に迫っている。
やがて彼は静かに停止した。俺は右足を前方に滑らせダウンコーナーであることを確認し、
「コーナー、グーッド!お疲れさん」
アイメイト協会の卒業試験、“銀座歩行”のゴール地点に無事に到着した瞬間である。
「おめでとうございます!」
担当指導員のSさんの明るく透き通る声と共に小さな手が差し出された。
「ありがとうございます!」
その小さな手を握り替えしながら礼を述べる。他に言葉は見つからない。
続いて理事長、インターンの女性達と次々に握手を交わし祝福を受け止めた。
最後にスタートした隣のクラスのEさんもゴール、無事に全員がこの“銀座歩行”をクリアしたことになる。
晴れ晴れとした気持ちに包まれた訓練生、協会スタッフの心の中は、きっとその日の天候を遥かに上回っていたに違いない。
それから一行はレストランとしてはわが国で最初に盲導犬を快く受け入れてくれたというカレーレストラン“ナイル”に向かった。
銀座での卒業試験の後の昼食は、必ずこの店でというアイメイト協会恒例の欠かすことのできない大切な一時である。
晴海通りを直進し、昭和通りを左折したところにその店はある。
われわれは2階に案内され、各自思い思いに席について一息。
その後、店の主人がわれわれの席までわざわざ出向き、訓練生一人一人に優しく労いの言葉をかけてくれた。
昼食後、人のワンツーを済ませ、次に、店が提供するアイメイトのワンツー場所に移動した。
そんなきめ細やかな心配りに感謝しつつ、
「ワンツー、ワンツー」
初めての場所だったが、トリトンはワンとツー、両方ともしてくれた。
「ワンツー、グッド!」
ワンツーは、いつも協会の運動場でしかしていなかっただけに、この柔軟な対応に少々驚きながら、頼もしくも感じていた。
“ナイル”のご主人と別れの挨拶を交わし、われわれ一行は地下鉄銀座線の東銀座駅を目指した。
帰りのルートは行きのそれとは異なり、銀座線で茅場町まで行き、東西線に乗り換え高田馬場で下車、西武新宿線に乗り換えて協会の最寄駅である東伏見まで行く。
東伏見から協会まではBコースで学んだお得意の道、人もアイメイトもホームグラウンドに帰ってきたかのように快調なペースで協会を目指した。
それからはトリトンの食事、人の入浴と言った具合に、普段通りのスケジュールをこなすことになる。
しかし、アイメイトを裏から援助してくれる人々のなんと多いことだろうか。
このような人々の深い理解があってこそ、自分がこの場所にいることができるのだとあらためて思い知らされた。
たくさんの人から、「がんばってくださいね」「おめでとうございます」などの言葉を頂戴し、もっと早くにアイメイト協会へ申し込んでおけばよかったと後悔すら覚える、そんな心に残る“銀座歩行”の一日だった。
ゴール地点で待ち受ける協会スタッフの祝福に、もしかしたら涙が出てしまうかもと思っていたが、本日冒した自分のミスが脳裏から離れず、それが俺の頬をつたうことはなかった。
しかし、妙な気分だ。
東伏見の駅にたどり着き、アイメイト協会に戻った時、やっと帰ってきたと感じた。不思議に、自分の家のような錯覚を抱いてしまうほど、ここは、温かな場所となっている。
さあ、夕食までの少しの時間をトリトンと過ごすことにしよう。
「おつかれさま!」の言葉と気持を乗せながら。
今夜のミーティングでは、本日の歩行について一人ずつ成果と反省点を順に述べた。
同じクラスの二人の女性は、さほどのアクシデントもなく無難にコースを回ってきたという。
先にも記したように俺はコースをはみ出してしまい通行人に道を尋ね、やっとのことゴールにたどり着いた。
しかし、俺の報告を聞いた担当指導員のSさんは次のように述べている。
「まったく問題ありません。上出来です。綺麗に歩くことだけがアイメイト歩行ではありません。
人に道を尋ねたりしながらアイメイトと共に目的地を目指すことが重要であり、初めての場所でも二人だけで歩けることがアイメイト歩行です」
確かにその通りである。見える人だって道を尋ねながら歩いている光景は日常茶飯、道を間違えることが失敗なのではなく、どのように修正するかが成功への近道なのだ。
続いて話された内容は、明日行なわれる、これまたアイメイト協会のもう一つの名物、“幻の卒業試験”のコースについての説明である。
今回の“銀座の卒業試験”、そして、明日の“幻の卒業試験”、いずれもアイメイト達も初めて歩く道。
この四週間に渡る厳しい歩行訓練が“幻”に終わらぬよう、最後のテストをトリトンと力を合わせて必ずやゴールしてみせる。
そして、明後日、皆が待つわが家にトリトンを連れて帰るのだ。】
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2011年05月12日

訓練日誌 26日目


皆さん、どうもこんにちは。お変わりありませんか?
連休の疲れが今頃になって出てくるこの時期、体調を万全に整えて充実した日常生活をお過しくださいね。
では、訓練日誌の26日目をお届けします。
さあ、いよいよ明日に迫ってきた“銀座歩行”、気持ちは今日を飛び越えてしまいがちになりますが、今日がなければ明日は永遠にやっては来ません。
そうです、本日もとても重要な訓練、そして、大切なトリトンのシャンプーが控えています。
まずは目の前の課題を一つ一つこなさなければ明日を迎えることはできないのです。
今回の日記では明日の“銀座歩行”についてのスケジュールやコース説明などが記されています。
多くの書籍でも銀座の卒業試験については詳しく記されていることを前提に、このブログ内においても地名や駅名などの固有名詞をそのまま記載させていただきます。
それでは、運命の明日を目の前にした今日の日記をどうぞ!
【5月7日(水) 晴れ
ゴールデンウィークも終わり、世間は今日から平常の生活リズムに戻ることになる。
さて、この協会での訓練も今日を入れて残すところ4日となった。無事に卒業できればの話だが。
そして、今日の午前中が、歩道を占めている障害物の回避の練習、午後はK駅近くのTデパートでのエスカレーター、エレベーターの乗降練習、協会に戻ってきてからは、犬のシャンプーが待ちかまえている。
今朝のトリトンのツーの量はやたら多かった。同じ物を同じ量食っているのに、やはり、生き物なんだなということをあらためて感じる。
先ほど、飼育奉仕の方に渡す写真を理事長に撮影してもらった。
トリトンとの歩行中の写真で、理事長が少し離れたところから待ちかまえて正面からと言うショットだ。
いつもの歩行練習と同じジャージなので、少しは着飾った方がよかっただろうか?
それとは逆に、サングラスをよそ行き用にしたり、女性達は少しお洒落をしていたようだ。
飼育奉仕者の方に向けて、「がんばってトリトンと歩いています」という気持を込めて歩いたが、画像にその気持が伝わっているだろうか?
どのような言葉を並べても感謝の気持を表すことはできないが、できることならば、トリトンの成長を逐一見守っていただきたいものである。
お互いの連絡先などの情報は原則として教えないことになっているとのことだが、これは、あくまでも原則であり、トリトンを通して出会いの輪が広がり、お互いが彼の犬生を見守ることができれば素晴らしいことではなかろうか。
アイメイトや盲導犬に関する書籍をたくさん読んできたが、飼育奉仕者と使用者の間で密に連絡を取り合い、良い関係を築いているという記述もたくさん耳にしている。
どちらにせよ、まずは協会を無事に卒業し、トリトンをわが家に連れて帰ることが先決であるが。
午前中の練習を終えてきた。
協会の車である地点まで全員が移動し、一人ずつ障害物の回避の練習を行なった。
車を降りてからしばらく歩き、歩道に乗り上げた車を回避するために、いったん車道に出て歩道に戻るという物だ。
右側に車道を見ながらと、左側に車道を見ながらの場面を2回ずつ練習した。
協会に戻ってからは、乗用車の乗降練習を簡単に行なった。
まず、椅子と屋根を確認し犬を座らせ待たせる。
自分が奥の座席まで乗り込み、続いて足もとに視符をかけながら「カム」で自分の左脇の座席の下に伏せさせる。
尻尾がドアの外に出ていないかを確認し、出ていれば中に巻き込んでからドアを閉める。
降りる時は、ナス管の根元を左手で持ちながら、「おりて」の声符と共に自分も左にずれながら、犬をそのままの方向で左の膝で犬を押すようにずらせていく。
つまり、犬はお尻から車外に降りるわけである。
滅多にタクシーを利用することはないと思うが、犬の毛が抜けるのを最低限に抑えるという意味でも有効な手段である。
お待ちかねの昼食の時間を迎えた。
昨日まで連休だったので、久々のMさんの手料理ということになる。
明日がMさんの公休日だから、今日の昼を入れて残り4回の手作り料理というわけだ。
俺の好みに気を使い特別におかずを作ってくれたりと、その心遣いに本当に感謝の気持でいっぱいだ。
現在時刻、午後5時52分、午後のスケジュールも大凡終え、居室で夕食の時間を待っている。
午後の練習について簡単に記しておこう。
1時に協会の車に全員が同乗し、K駅近くのTデパートの地下駐車場に向かった。
一人ずつ順番にデパート内に入り、エレベーター、エスカレーター、店内の歩行などを順次行なった。
4時前に協会に到着、すぐにシャンプーを行なった。
シャンプー後は、トリトンの食事、ワンツー、自分の入浴と忙しく時は過ぎていった。
明日はいよいよ銀座歩行、トリトンも俺もさっぱりした体で臨むことができる。
取材も来るということなので、髪の毛も剃り上げておいた。
多分、俺などは放映の際にはカットされまったく映らないと予想されるが念のためである。
さて、これから夕食、そして、ミーティングと続く。
ミーティングでは、明日の銀座歩行のための注意点などが話されるだろう。
協会での最後の洗濯をしている。現在は、乾燥機に放り込んだ状態、ミーティングが終わる頃に、もう一度回せば完璧に乾くだろう。
そのミーティングを終え、トリトンのワンツーを済ませ居室に戻ってきた。
明日の予定について記すことにしよう。
協会から車で吉祥寺駅まで移動する。
4番線の中央線に乗り東京駅で降りる。
山手線に乗り換え、一つめの有楽町で降りる。
銀座口から晴海通りに出て、車の流れを右に聞きながら銀座四丁目まで進む。
ここまでは各自に一人ずつ指導員がついてくれるそうだ。
銀座四丁目からが卒業試験である。
銀座四丁目の和光前がスタート地点
右側に銀座通りの車の音を聞きながら直進、3本のコーナーを過ぎて4本目のダウンコーナーにつける。
1本目が銀座三丁目、2本目が銀座二丁目、3本目が銀座一丁目、4本目が銀座通り入口という交差点である。
尚、1本目から4本目までのコーナーはすべて信号有り。
4本目のダウンコーナーにつけた後は、バックし、すぐにレフトコーナーを指示、銀座通りを横断する。
右に曲がり3本のコーナーを過ぎて4本目のダウンコーナーにつけたところがゴール地点となる。
ゴール地点の左後ろ角が三越で、行きの和光の向かい側に当たる。
つまり、長方形のコの字型を歩くコースとなる。
歩道も広いが、歩行者も多く、左に寄せながら歩くことが重要だ。
往復で15〜20分程度の道程、一人ずつ出発し、約7分後に次の人が出発するという流れで行う。
無事にスタート地点に立ち、トリトンと二人でゴール地点にたどり着ければ幸いである。
いよいよと言った雰囲気だ。
この協会で宿泊するのも今晩を含めて残り3日だ。
長いようで短かった4週間、どれだけ犬のことを学び、どれだけトリトンと仲良くなれただろうか。
もちろん、これからが本当の意味でのスタートになるが、ここで学んだことはきっちりと普段の生活の中に取り入れながらトリトンと歩いていきたい。】
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2011年05月11日

訓練日誌 24日目、25日目


皆さん、こんにちは。
今回の記事は、訓練24日目と25日目の二日分の様子をご紹介します。
今回で電車乗降の練習もとりあえず終了、明日から卒業までその訓練は日替わりで目まぐるしく変化し、その間に卒業試験ともう一つの幻の卒業試験の二つの大きな山場を控えています。
卒業の日も徐々に目の前に迫りつつある時期、私の気持ちの中にも期待と不安の両方が混在している、そんな揺れ動く様子を当時の日記から垣間見ることができます。
では、3年前の5月に時間を戻しましょう
【5月5日(月) くもり
新しい1週間が始まった。そして、アイメイト協会での最後の1週間の始まりでもある。
5月5日は“こどもの日”、この時期いつも思い出されることは、幼稚園で作った小さな鯉のぼりのこと。新聞紙で作った兜を嬉しそうにかぶっている小さな自分の姿を切り取った色あせた写真を鮮明に記憶から蘇らせることができる。
午前中はKAさんの指導でS線の乗降練習、そして、午後が、担当指導員のSさんによるC線での乗降練習が予定されている。
電車乗降の訓練は2日目を迎えるが、自分自身、まだピンとこないところが多い。明日までの練習で、少しでも体に叩き込む必要がある。
午前中の練習を終えてきた。
今回の注意点は、犬の動きについていくということで、現時点では、ハンドルの動きに対応できておらず犬の仕事の邪魔をしていると指摘された。
例えば、「ライトドア」で、電車のドアを探させる場合、また、改札の切符投入口を探させる時、犬の動きにきちんとついていけないので、トリトンが途中で止まってしまう。
基礎訓練についても、もう少し減り張りのある命令をくだすようにした方が望ましいと指摘された。
同じタイミングで指示を出したなら、犬も次に何を言われるかを感じ取り行動しやすくなってしまうからだ。
これは、階段や段差を教える時にも言えることで、「グッド」「ゴー」の二つの言葉が一つの言葉として使いがちになり、犬としても「グッド」の後には「ゴー」がくると判断し、こちらが指示を出す前に行動してしまうからだ。
一つしか空いていない席を探すことや落ちた切符を拾ってくれるなどの行動は上手にこなし、俺が落としてしまった切符をトリトンが拾ってくれた時には周囲からの「すごい!」というどよめきが耳に届いたほどである。
犬によって、得意、不得意があるようで、トリトンにとってはゲーム感覚で仕事をする方が大得意のようだ。
午後の練習を終えて、トリトンの食事とワンツーを済ませ、現在は、風呂の順番を待っているところだ。
午後の歩行指導では電車とバスの乗降練習を行なったが、無難にこなしたという感想を抱いている。
やはり、電車に乗る時、バスから降りる時が最も緊張し、思うようにスムーズに行動できないものだ。これもお互いの経験不足からくるものだろうし、少しずつタイミングもつかめてくるのではなかろうか。
バスを降りてからは協会まで快適に歩いてくることができた。
明日もう一日同じように電車とバスの乗降練習、これが終われば次の日は、トリトンのシャンプーが待っている。
いつもいつも世話にばかりなっているトリトンに対し、やってあげられることがあるならば、どのようなことでも手間を惜しまないつもりだ。
8時からミーティングがあった。
今回は犬の体重測定の方法について習った。
まず、ハーネスを外し引き綱だけにして、体重計の前に犬を待たせる。
続いて人の体重を計る。
その後、体重計からおりることなく、その前に待たせておいた犬を抱き上げ人と犬の合計体重を測定する。
体重計からおりて、そっと犬を床におろす。
差し引きの体重差が犬の現時点での体重となるわけだ。
家に帰ってから最初の頃は、1週間に一度くらいのペースで測り、徐々に期間を延ばし、環境に慣れてきたなら1ヶ月に一度くらいのペースで測定すると良いとのこと。
体重の増減については2キロ以内を目安として、それ以上、若しくは、それ以下にならないように注意する。
火曜日は本日に引き続き、電車とバスの乗降練習、水曜日の午前中は車道回避の練習を行なうそうだ。
これは歩道いっぱいに置かれた障害物を回避するためにいったん車道におり、その後また歩道に戻るというものだ。
午後はK駅付近のTデパートに行き、エスカレーターの乗降練習、売り場の歩き方などについて学ぶ。
その後、協会に戻ってきてからシャンプーという流れである。】
【5月6日(火) 晴れ、強風
朝からよく晴れている。日差しがかなり強く感じるが、気温は今のところそれほど高くない。
未明から風が強く、本日の歩行練習に支障がなければよいのだが。
とにかく、今日も無事にトリトンと歩いてこれればそれでいい。
朝食を済ませ、ブラッシングも終えた。
本日の歩行練習、2番目のスタートで、午前中はC線、午後がS線の電車乗降の訓練となる。
午前、午後共に指導員はSさんである。
Sさんと一緒に歩く回数も残り少なくなってきている。今まで、そしてこれから俺に与えてくれる指導は忘れないように心がけ、今後の日常生活に十分活かしたい。
午前中の練習は無事に終えてきた。今回も、まずまず無難にこなしたという感じだがバス停を一発で教えてくれたことは大きな進歩である。
券売機や改札口も少しずつ見つけるのが上手になっているように思う。
俺もトリトンの動きの邪魔をしないように歩くことを重点に考え、ハンドルが示す角度に忠実に従ったつもりである。
これから昼食、そして午後の練習へと移る予定だ。
本日の天候は実に爽やかで、湿度がここ数日に比べるとかなり低い。
風が少し強いが、北から運ばれてくる涼しさがとても心地よい。
現在時刻は2時、午後の練習の順番を待っている。多分、出発は3時前後になるだろう。
その練習から戻ってきた。
電車の乗り降りは無難にこなしたという感が強く、決して上手に乗れたという間隔はない。
連休も最後という本日、K駅、N駅、T駅は人出が多く、トリトンの姿を目にして様々な声が飛び交っていた。
協会に戻り、すぐにトリトンに食事を与え、ワンツーに出し、風呂に入ってきた。
隣のクラスの2名は、アイメイトのシャンプーをやっており、いつも、風呂で一緒になるNさんは不在で、一人で風呂場を占領した。
本日で電車乗降の練習はとりあえず終了し、明日からは毎日のようにメニューは異なり、卒業に向けてラストスパート、決められたスケジュールは矢のように突き進む。
これからは指導員が後ろからついてくることはなく、何があっても、すべて自分自身で責任をもちながらトリトンを守っていかなければならない。
その責任の重さを考えると、少しばかりの不安もあるが、それ以上にトリトンが自分に与えてくれる感動や勇気を大いに楽しみながら毎日を過ごしていきたい。
ただ一緒にいるだけで心が癒されるのに、自分をどこへもぶつけずに慎重に歩いてくれるトリトンは、神様が与えてくれた宝物と言っても過言ではないだろう。
本日も夕食とミーティングを残して無事に終わる予定である。
俺もトリトンも体調は悪くない。このまま二人で元気に最後まで乗り切っていきたい。】
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2011年05月10日

訓練日誌 23日目


皆さん、こんにちは。
本日は5月10日、3年前、無事にアイメイト協会を卒業した日であり、私とトリトンがわが家に一緒に帰ってきた日でもあります。
あれから、もう3年が経つなんて、時の流れが少し早過ぎますが、何かの間違いじゃないでしょうか。
色々なところに出かけたり、たくさんの道を二人で覚えて颯爽と歩き、様々な人とも出会い、たまには体調を崩したり、とにかく今日までお互い楽しく過ごしてきました。
今回の日記は、2008年5月4日、日曜日のものです。
この日、訓練はおやすみ、でも、私達訓練生にとっては思い出に残る大きな出来事がありました。
“盲導犬の父”塩屋賢一会長が奥様と一緒に協会にお越しになり、昼食前の一時、われわれ訓練生を励ましにきてくださったのです。
アイメイト協会での歩行指導では毎回恒例の行事になっており、私も先生に直接お目にかかるのをずっと前から楽しみにしていました。
お二人とも気取らず、とても穏和な方で、周囲の空気が一気に温まり、それに伴い私の体内さえも温かさで満たされていくのを感じていました。
戦後間もない頃、大枚をはたいて手に入れたシェパードのアスターとの生活を懐かしそうに語る先生の声は優しく、心から犬を愛し、尊敬に値する仲間として永きにわたり接してこられた様子がひしひしとこちらにまで伝わってきました。
あっという間の短い時間でしたが、私にとっては、形に残らない大切な財産として今も心の引き出しにきちんと収められています。
そうそう、お茶会も終わりに近い頃、先生が私に向かって一言声をかけて下さいました。
「君は、どうしてそういう頭にしているんだい?」
今もそうですが、私の髪型は、ここ15年ほどスキンヘッドにしています。
先生にお会いするために前夜髪の毛も綺麗に剃り上げていたので、かなりツルツルになっていました。
でも、先生にそのような質問をされることなど端から考えていませんでしたから、思わず私の口から出た言葉といったら答えにもなんにもなっていません。
先生の問いかけに対して、
「はい、申し訳ありません」
これだけでした。なんと愚かな私でしょう。
しかし、これも今では懐かしい思い出、その塩屋先生は、偉大な功績を残し、昨年9月にご逝去されてしまいました。
けれど、アイメイトに対する先生の強い思いは、連綿と続く自然の理の如く途絶えることはなく、現在、そして、遥かなる未来に向けて協会スタッフの皆さん、そして、使用者の私達によって永遠に受け継がれていくことでしょう。
前置きが長くなりました。
それでは、当日の日記をどうぞ。
【5月4日(日) 晴れ
朝から天気は良さそうで、小鳥達の囀りが耳に心地よい。
今日は歩行練習は休み、担当の指導員もお休みということで、われわれの面倒をみてくれるのがRYという男性指導員である。
このRYさん、アイメイト使用者のブログで何度も登場してきているので、面識はなかったものの、ある程度の認識は持ち合わせていた。
就職して9年、関西弁丸出しのユニークでとても優しそうな男性だ。
先週のSHさん、昨日のKAさんに続いて担当指導員のSさんとはまた別の違った指摘をしてくれることを願っている。
全国に100人に満たない職業、しかも、世界でもトップクラスの水準と自分では解釈しているこの協会の指導員から受ける様々なアドバイスは、大変貴重なものと言える。
本日予定されている大イベント、11時前後に会長の塩屋賢一先生が“お茶会”と銘打って協会に訪問されるとのことだ。
何冊もの書籍から盲導犬の先駆者としての努力、苦労、それに優る熱意をひしひしと感じていた方だけに、自分にとっては、ほとんど雲の上の存在と言えよう。
その前にワンツーとブラッシングがあり、午後は、面会時間となる。
夕方の4時からは、いつもと同様のスケジュールに沿った行動となる。ただし、ミーティングは休みとなる。
居室に掃除機をかけ、トイレ掃除もした。
おまけにハウスのタオルも新しいものに交換してもらったので、5月の気候に負けないくらい爽やかな環境だ。
11時前に塩屋会長夫妻が協会を訪ねられた。
クラス全員は予め食堂に集合し所定の席で待つことに。テーブル上にはケーキとコーヒーのいい香り。
12時過ぎまでの1時間と短い時間ではあったが、中身の非常に濃い有意義な時間を過ごすことができた。
口数は少ないものの、その一言一言に重みを感じ、犬に対する愛情の深さがひしひしとこちらに伝わり、しばし感銘を受け続ける温かな一時が流れた。
奥様も気取らず実に穏和な方で、この会長にこの奥さんといった見ていて実に微笑ましい光景であった。
いままでに数えきれぬほどたくさんの労苦があっただろうことは書籍などを通じてある程度承知していたが、そのかけらも見せることなく、われわれに対しても非常に優しく接してくださった。
しつこいようだが、あらためてこの協会で学べる幸せを実感し、同時に自らに誇りを抱くことができたように思う。
会長夫妻が帰られた後は、すぐに昼食の時間となった。
その席で、本日の世話係のRYさんの犬に対する訓練や、指導を受けるわれわれの心構えなどについての話しも納得の連続で聞かせてもらった。
1時にワンツーに出し、トリトンも“ワン”“ツー”の両方をしてスッキリ、現在は面会に訪れる人間をおとなしく待っているところだ。
今回の面会は、次男のNが自らの彼女とM子を車に乗せてやって来る。
M子は先週、先々週と2回トリトンに会っているが、次男のNも彼女も初めての対面となる。
誰にでも愛想を振りまくトリトン、きっと二人も彼を気に入ってくれることだろう。
面会後、トリトンの食事、ワンツー、入浴と、いつもの流れでスケジュールをこなしていったが、一つ事件が勃発した。
トリトンのワンツーの際、彼が産み出したばかりのホカホカのツーを思いっきり足で踏んでしまった。
今までにそのようなことはなかったが、今回、トリトンのツーの合図が判断できず、歩きながらのツーを見逃してしまった。
朝から2回、特に1回目のツーの量が多かったので、3回目はやらないだろうという勝手な俺の読みが甘過ぎた。
本日の世話係のRYさんに靴の裏を洗ってもらい事なきを得たが、余計な仕事をさせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱい、ひたすら反省の時を過ごした。
今回の教訓を活かし、今後、そのような失敗を少なくしていかなければと思っている。
靴に“ツー”が付いたのだから、宝くじにでも当選するかもと密かに楽しみでもある。
と言うことで、夕食を摂り、この日最後のワンツーに出せば今日も無事に終わる。
明日から2日間は土曜日に引き続き電車乗降の練習が待ちかまえている。少しずつ慣れていき、今後の実生活で大いに役立てていければと思う。】
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2011年05月09日

訓練日誌 22日目 後編


皆さん、こんにちは!
今年のゴールデンウィークも終わり、本日からまた日常の生活に戻る方もたくさんいらっしゃることと思います。
まだまだ体がシャキッとしないかもしれませんが、体調には十分留意され元気にお過しいただければ幸いです。
では、本日は前回の続きになります。
【5月3日(土) 雨のちくもり
今日から3日間は、電車乗降の練習を行うという。
詳しくは聞いていないが、午前と午後では利用する電車の路線が違うようだ。
例えば、午前にC線だとしたら、午後はS線といった感じになるのだろう。
昨日からの雨も上がっておらず、カッパを着ての出発になるだろう。
それに伴い、電車内の床も濡れており、トリトンを伏せさせるとかなり汚れてしまうかもしれない。
どのような条件下でも歩けるようにという意味からも、このような天候の中での練習も、いずれ役に立つことがあるだろう。
今日もトリトンは元気そうだ。きっと、上手に俺を導いてくれることだろう
午前中の練習を終えて帰ってきた。
今回はC線の電車乗降とバスの乗降練習を行なった。
まず、協会から車でK駅まで移動、車から降りて、駅構内を歩き、切符売場を目指す。
売場付近と思われるところで「きっぷ」の指示を出し、券売機の台に鼻先をつけさせる。
右手で券売機を確認後、ハーネスから左手を外しアイメイトを座らせ切符を購入する。
次に、改札口の方向に視符を出しながら「かいさつ」の指示を出し、自動改札の切符投入口に鼻先をつけさせる。
カード専用の場所に鼻先をつけたとしたら、左、あるいは右に方向を変えてもう一度探させる。
切符を投入口に入れながら「ゴー」で一緒に改札を抜ける。
その後、エスカレーターや階段を利用してホーム上に出るが、少し前方に歩かせてから停止することがポイントになる。
これは、すでに電車が入線していた場合、犬はすぐに乗りたがるため、ホーム上を少し歩かせ、ユーザーの希望の位置で乗るようにするためである。
左の点字ブロック側のホームに入線する電車を利用する場合は、ハーネスから手を外し左側を向かせて座らせる。
逆に反対側の電車を利用する場合は、右側を向かせて座らせ、電車の侵入と同時に「ゴー」で右側の点字ブロックにつけさせる。
電車が止まったら必ず右側のドアを指示する。
これは、左側のドアを利用した場合、使用者が電車側に位置することになり、ホームと電車の間に足を落とす恐れがあるからだ。
左側に行こうとした場合はすぐにチョークして叱りやり直しさせる。
ドアが開いたら、ユーザーが右足で乗降口を確認し、「ゴー」の指示と共に犬と中に乗り込む。
車内に乗り込んだら「チェアー」の指示を出して椅子を探させる。
使用者が座った後に「はいって」の指示で犬を足下に伏せさせる。
尻尾は他の乗客に踏まれないよう、使用者の足の内側に収める。
降りる駅が近づいてきたら、「ドア」の指示で降り口を目指す。
車内から降りるときも、「ドア、グッド」に引き続き、「ゴー」の指示で犬と一緒にホーム上を目指す。
電車とホームの間隔が開いていることを考慮し、なるべく足を前の方に着地させることが重要となる。
電車から降りて右側に進ませる場合は、すぐに「ライト」の指示を出さず、降りた方向に少し歩かせてから指示を出すことが大切で、これは左側通行を徹底する意味からだ。
数回同じ練習を繰り返した後、駅を出てバスを利用し教会近くの停留所まで行った。
「バス」の指示で停留所を探させるが、今回、トリトンはバスに乗るのは初めてとのこと、数回にわたり練習を繰り返した。
バスに乗る時は、電車同様、「ドア」の指示でステップの手前につけさせる。
「ゴー」の指示と共に犬と一緒にステップに足をかけ車内に乗り込む。
空いていそうならば、「チェアー」の指示を出して空席を探させる。
降りる時は、電車のそれと同じように「ゴー、ドア」の指示で降り口を探させる。
ステップに足をかけたら「ドア、グッド」で賞めゴーの指示と共に一緒に降りる。
午前中は雨が降っていたせいもあり、、気分的にも少し慌ただしい中の練習だったように感じている。
午後はKAさんというインターンの女性が指導員としてS線の電車の乗降練習にあたるという。
様々な指導員に習うことで、広く知識を吸収することができるのはとてもありがたいことであり、今回もどのような注意を受けるか、少し楽しみでもある。
ソノ午後の練習を終えてきた。
KAさんによる初めての歩行指導、基礎訓練から、細かなところまで見てくれており、Sさんにいつも言われていることと同様の注意を受けた。
午後はS線の乗降練習で、Bコースで利用した駅を目指して歩いた。
、午前中と同じように、「きっぷ」と「かいさつ」の指示で改札内に入りホームに降り立つのだが、それぞれの手順がまだ身についておらず、少しずつ戸惑いながらの行動となった。
もちろん、電車乗降の練習自体も非常にぎこちなく、ある程度の反復練習が今後必要になるだろう。
今回、KAさんから受けた注意点で最も参考になったことは以下の通りだ。
犬が発する動きに逆らわずついていくという基本ができておらず、俺が先に動いてしまう傾向があり、その結果、犬にちゃんと仕事をさせていないということだ。
犬の能力を引き出すためにも大変重要なことで、少しの時間ではあったが、これらの欠点を的確に指摘してくれるKAさん、きっと立派な指導員となり、優秀なアイメイトを世に送り出す日も遠くはないだろう。
本日も無事に練習を終えることができた。
このところ、毎日のように2回から3回トリトンと遊んでいる。そして、俺の膝の上に顎をかけて眠るのが日課になりつつある。
そのしぐさは、なんとも言えず可愛いもので、体全体をこちらに預けてその体温を送り続けてくれる。】
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2011年05月08日

訓練日誌 22日目 前編


皆さん、こんにちは!お元気ですか?
おかげさまでトリトンは元気にしています。なんと言ってもこれが一番グッドですね。
ゴールデンウィークも今日まで、明日からは平常の生活に戻られる方も多いことでしょう。
大型連休の最終日を怪我のないように元気でお過し下さい。
さあ、それではいつものように本題に入りましょう。
まだまだ続く厳しい訓練の続きをどうぞご覧ください!
4つのテストを無事に終え、今日から休日を挟んで3日間は電車乗降の練習です。
ここで、皆さんに一つご理解いただきたいことがあります。
訓練当時つけていた日記は膨大な量に上ります。
このブログでは、その一部を皆さんにご紹介していますが、一つの動作に対し描写が細かすぎ、読んでいてもピンとこない、くどすぎる、だから面白くないと感じる方もたくさんいらっしゃることと思います。
それによって、数少ない読者が減少してしまうかもという私の危惧が常に頭の中から消えることがないというのも事実です。
しかし、このブログ上で私が伝えたいことの一つに“見えない世界”がどういうことなのか、その“見えない世界”を生きるためにどう工夫しているのか、その手段にアイメイトを選択し、目の前にあるだろう一つ一つの障害物に対し、どのように二人で力を合わせクリアしていくのかを少しでも知っていただきたいというものがありました。
トリトンと歩いていると、すれ違う人の多くは必ずと言っていいほど同じ言葉を発しています。
「お利口なワンちゃんだねえ!」
「あのワンちゃんは今お仕事中なのよ、見えない人を連れていくんだからすごいわねえ!」
盲導犬に適した繁殖犬から生まれてくるアイメイトの卵達確かに血統的に優れ、盲人と歩くために必要な事柄を訓練を通して身につけています。
でも、それは原則として人の指示を待った上での行動であり、アイメイト自らが考えて自発的に動いているのでは決してありません。
しかも、使用者がアイメイトをきちんとコントロールできていなければ、いくら指示を出しても犬は素直に言うことを聞いてはくれません。
アイメイト協会の理事長は、いつもこんなことをおっしゃっています。
「アイメイト、人がいなければただの犬」
そうなんです、ユーザーである視覚障害者の私達が逐一アイメイトに指示を出さない限り、いくら優秀なアイメイトであっても、一歩も前に進むことはできないのです。
例えば、ピアノ教室にトリトンと向かう際、家の玄関ドアを開けてから教室がある建物のドアにたどり着くまで、一体幾つの指示をトリトンに出し、その度に彼は動き、賞め、叱りの繰り返しをしているのでしょうか。
見えない私の頭の中の地図をもとに、6本のコーナーを過ぎ、5メートル進んだ右のドアまで二人で協力し合い一つの仕事を完成させているのです。
まさにトリトンは私の目になり、すれ違う人をよけ、看板や自転車をよけ、水たまりをよけ、必ずコーナーで止まるのです。
それに対し私は、自らの耳を駆使し、空気の流れを体で感じ、圧迫感を感じながら周囲の状況の把握に努めつつ、次の指示を出す準備をしています。
と同時に、歩きながらトリトンの体調や精神状態などの情報も彼の体からハーネスのハンドルを通して受け取ります。
日常生活において80〜90パーセントは視覚に頼っているということです。
私達は残りの10〜20パーセントをどこまで最大限に引き上げていくかの世界で生きていることになります。
目の前のドアを開ける作業、晴眼者にとっては何も意識せずに行なう行動、しかし、私達にそのドアを見ることはできません。
ドアを開け向こうの世界に足を踏み出すためにアイメイトの力を借りているのです。
そのためにはたくさんの指示と感謝の気持ちの積み重ねが必要であること、時間は何倍もかかるかもしれないけれど、できた時はトリトンと二人で喜びを分かち合える、それはかかった時間以上に尊いものであることを皆さんにもご承知いただければと念願するドスコイノブです。
すいません。えらく前置きが長くなりました。
この日の日記は次回へ持ち越しさせていただきます。
                              つづく
posted by ドスコイノブ at 09:00| Comment(2) | TrackBack(0) | トリトンとの日々

2011年05月07日

訓練日誌 21日目


皆さん、こんにちは。
アイメイト協会に泊まり込んでの訓練、本日は4回目のテストの当日です。
このテストをクリアすれば、卒業試験の“銀座歩行”までとりあえずテストと呼ばれる代物からは解放されます。
しかし、その合間には覚えることがまだまだ山積み、さて、私の頭の中の残り少ない容量が卒業まで持ちこたえることができるかどうか。
その前に風船が割れるようにいきなりパンクし、今まで習ったことが一気に頭から消滅してしまうかもしれません。
さあ、賑やかな繁華街、今日もトリトンと二人で仲良く力を合わせて楽しく歩いてまいりましょう。
5月2日(金) くもり時々小雨
【朝からどんよりした天候で、午後からは雨になるという予報が出ているそうだ。
少し蒸し暑いくらいの気温で、午前中のKのテストは半袖1枚で出かけたが、それでも汗ばむほどだった。
肝心のテストだが、結果はかなり満足できるもので、最後のI街道でストレートコーナーにつけなかった以外、トリトンの誘導は完璧だったように思う。
その見逃してしまったコーナーについては、俺の頭の中に地図が描かれていたので、引き返してやり直しすることができたし、大きくコースから外れることなくほぼ順調に歩けた。
ゴール地点到着後、指導員のSさんから成果を聞かれ、先ほどのストレートコーナーでのことを正直に話し、自分のとった行動を説明した。
でも、今回のテストは、指導員が後からついてきたということで、すべてを見ていたSさん、俺がとった対処法に誤りがなかったことも評価してくれたし、その他についても問題がないということだ。
とりあえず、わがクラスの3人は無事にゴールしたのでホッとしている。
今週の月曜日から練習に加わっていたYさんは、本日めでたく卒業とのこと、昼食後、晴れて帰宅の都につくということだ。
前回は身内の不幸という思いがけないアクシデントに見舞われ、最後の最後で協会を去る形になったが、今回あらためて無事に卒業を迎えることができて本当によかった。心から「おめでとう!」の言葉を贈りたい。
午後の1時前にワンツーを終え、全員が車に同乗しYのF先生の動物病院に行き、健康診断、ならびに、混合ワクチンの接種を受け、その後、犬の健康管理、病気になった場合の対処法などの話を聞いた。
75歳とは思えぬほどしっかりした人で、様々な話もわかりやすく説明してくれて大変参考になった。
その一部を下記に記す。
外出先から帰った後の犬の足拭きに関して、濡れた雑巾や水で足を洗うことは避けるべきとのことで、これは、水虫の原因をつくってしまう恐れがあるからだという。
外出後は、靴ブラシを用いて肉球とその周囲を丹念にはらってあげれば、ほとんどの汚れは落ちると言うこと。
また、汚れが激しい時には、人が使用するシッカロールを小さじ1杯ぐらいの量をすり込み、後に、先ほどと同じように靴ブラシで汚れを取るといいそうだ。
夏場の外出先での注意点は、熱射病予防をすること。
外出前に冷たいタオルを持って行き、犬の鼻先から後正中線上にかけて拭いてやり熱を取ってあげるようにする。
外出後は、氷を口の中に放り込んであげたり、ポカリスウェットなどのスポーツ飲料を飲ませてあげるとよい。
それに加え、冷房の効いた室内で体温を下げてあげることも重要となる。
これらの対処により、30分以内で、ハアハアという荒い息づかいも取れてくる。
それでも変化がないような場合、荒い息づかいが続いたり、嘔吐する場合は、すぐに獣医に連絡して連れて行くことが賢明である。
毎朝起床後すぐに、犬の耳を握って体温を確認し、その日の体調を気遣う必要がある。
下痢に対する対処法は前日のミーティングで記したことに準ずる。
フィラリアの予防薬は、錠剤のものもあるが、犬の方で飲んだふりをして後で吐き出すことがあるため、チュアブル状の薬の方が確実性が高い。
混合ワクチンは1年に一度の摂取が望ましい。
もちろん、法律で定められている狂犬病ワクチンも1年に一度摂取し、役所に届け出ることが必須となる。
ノミ取りは、フロントラインと呼ばれる液体状の薬を肩甲間部に垂らすことで、2ヶ月間ほど効力を発するということだ。
麻酔を必要とする手術を受ける場合は、必ず、アイメイト協会に連絡をとり、F先生の指示を仰ぐ必要がある。
今回は、7種混合ワクチンを摂取したが、その場合、肩甲間部に注射をする。
犬を診察台の上に抱き上げて乗せ、すぐに座らせる。
犬と対面し、両耳をチェーンカラーと共に握っておくと静かに注射を打たせてくれる。
採血は前足の下の方で行うが、この場合、犬を座らせ右横につき、犬の首を抱え込むようにする。
トリトンは体を小刻みに震わせながらおとなしく我慢してくれた。実に偉い。
夕方からは時折、激しい雨も降り、渋滞も重なり、協会に戻ったのは6時半を過ぎていた。
すぐに犬の食事を与え、、ワンツーに出し、休む間もなく夕食の時間となった。
順調に進めば、来週の木曜日にいわゆる卒業試験、“銀座歩行”が予定されている。
その様子を撮影するために、テレビ局が取材に訪れるという話を動物病院から協会に戻る車中、同行したK指導部長から聞かされた。
国産第一号の盲導犬、チャンピィに纏わるドラマ化が決定、現在制作中、その関係で今回の取材という流れになったようだ。
放映は、今年の秋ぐらいと聞いている。
チャンピィのモデルとなるシェパードも現在アイメイト協会の犬舎にいて、アイメイトとしての俄訓練を受けている。
名前はヘーゼルと言い、体重30キロもある大きな雌で、ブラッシングの時に紹介され、一度触らせてもらったこともある。
どのようなドラマに仕上がるのか、今からこちらも楽しみだ。
と言うことで、本日はかなり強行軍のスケジュールだったが、やっとのこと落ち着いたところである。
明日からの3日間は電車乗降の練習をするという。
午前がC線だとしたら、午後はSセントいった具合で進めていくそうだ。
まだまだ教えてもらわなければならないことは山ほどある。
卒業後、家に帰ってから迷うことのないように少しでも確実に覚えていかなければならない。
それにしても、トリトンと歩くことが日を追うごとに楽しくなっている。
そして、どのようなコースの課題が与えられようと、二人で苦労しながらも楽しく歩ける自信もついてきている。
姿勢良く背を伸ばし、大きく右腕を振って歩けば、トリトンもそれに応えて小気味よく歩いてくれるのだ。
好奇心が非常に強く、人が大好きで、誰にでも大きく尻尾を振って愛想を振りまくトリトンだが、きっちり仕事をしてくれる姿は実に頼もしい。
そして、I市に帰ってからも、必ずや人気者になって、地域の住民にもとけ込んでくれると確信している。
自分が思い描くアイメイトにしていくためにも、自分自身がトリトンをしっかりコントロールし、健康管理にも十分気配りしていかなければならないという責任の重さも感じている。
とにもかくにも、本日で四つのテストを無事に終えたことになる。今日だけは、その充実感に浸らせてもらうことにしよう。】
posted by ドスコイノブ at 09:00| Comment(4) | TrackBack(0) | トリトンとの日々