2010年11月09日

トリトンの一日 3

前回もお話ししましたが、私は自宅で仕事をしているので通勤という形でアイメイトと歩くことはありません。
用事があって出かける以外は散歩という名目で、毎日約1時間から1時間半、距離にして4q〜6qを楽しく歩き回っています。
トリトンを迎えるまでは駅まで行くのがやっとで、しかも、白杖を使っての歩行は緊張の連続で精神的な疲労が大きく、何よりもえらく時間がかかったことを鮮明に覚えています。
家で仕事をする前は電車を乗り継いで通勤していたので、行き帰りの疲労が仕事のそれを上回り、帰宅後は口をきくのも億劫という日々の連続でした。
盲導犬のことは以前から興味はありましたが、約1ヶ月間の泊まり込みの訓練があると聞いていましたし、そんな長い期間仕事を休むことも事実上叶わなかったので諦めていたのです。
その後、私の下手くそな白杖歩行による肉体的、精神的疲労はピークを迎え、慣れ親しんだ職場との別れを決意する大きな理由に発展していきました。
そして、家族の大きな助けを借りて現在の自宅開業を手に入れ、通勤地獄から解放されるに至ったのです。
しかし、本当に人間って勝手なものです。いや、私に限ったことかもしれませんが、通勤から解放されると今度は用事もないのに外に出る必要がなくなり、行動も性格も内にこもるようになってしまったのです。
外出したいと思っても、家族の都合などを配慮しながらですから、行きたい時に人の手を借りずに出かけることは難しい問題でした。
今のままではいけない。なんとかしなければ…
「そうだ、盲導犬だ!」
お客さんにちゃんと説明すればわかってもらえる。自分の店なので1ヶ月間の休みもなんとかなる。
思い立ったらじっとしていられず、自分なりに盲導犬に関することを調べ、その結果、アイメイト協会にたどり着いたのです。
はじめて協会を訪ねた時のことは今でも忘れることはできません。
とても寒い火曜日の午後でした。雪もちらついていたほどです。でも、私の心は温かさで満たされていました。
歩行指導部長のNさんと面談し、そのあと協会内を案内してもらいました。
驚いたことに犬舎には60頭もの犬がいるにも関わらず、しーんとしているではありませんか。それだけたくさんの犬がいるのに特有の臭いも感じません。
それは、協会のドアを開けた時から感じていたことで、別の建物に犬舎があるのだろうと思っていた私はかなり面食らったものです。
そして待ちに待った体験歩行です。
白杖を持たずにスピードを出して歩ける、こんな夢のような現実を信じられず、自宅までの帰路は、放心状態におちいり、電車を乗り過ごしたほどです。
                              つづく
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上の写真は、2009年6月、三男夫婦の娘のお宮参りの際に撮影されたもので、私達夫婦とトリトン、三男夫婦と娘です。
posted by ドスコイノブ at 09:00| Comment(2) | TrackBack(0) | トリトンとの日々