2011年05月16日

訓練日誌 あとがき


皆さん、こんにちは!
今回を入れて30回にわたるえらく長い“訓練日誌”は、本日をもって終了です。
6月にずれ込むこともなく、なんとか書き終えることができて、今はホッとしています。
私だけが安堵しても仕方のないこと、アイメイト協会での歩行指導について、少しだけでも皆さんにご理解いただけたのだろうか、一抹の危惧を抱きつつ、今回の記事を書いています。
アイメイト協会最寄駅で担当指導員のSさんと別れ、私とトリトンは自宅のある埼玉県I市に向けて出発しました。
と言っても、自宅の最寄駅には私の奥さんが迎えにくることになっていましたから、電車を一度だけ乗り継ぐ行程が二人の初仕事でした。
ドアを探し、空席を探し、乗換駅では階段を探し、そして、改札を探す。
私とトリトンは、これら一つ一つの仕事を力を合わせこなしながら、少しずつ自宅最寄駅に近づいていきます。
後ろから私達を見守ってくれたSさんがいないという事実は、私の心を寒くしていました。なんというか、風通しが良すぎるんです。
そんなことでは先が思いやられてしまいますが仕方ありません、若葉マークを貼ってもらったばかりの超初心者なのですから。
なんとか二人で自宅最寄駅に到着、しばらく待っていると地響きを立てて私の奥さんが右後方から参上。
トリトンがレインコートを着て改札口の方を向いてスィットしている後ろ姿が今でも目に焼き付いていると、当時を振り返り彼女は語ります。
さあ、わが家に向けて出発です。
白杖を使っていた頃は避けていた家までの最短コースで帰ることにしました。
私の奥さんに指導員の代わりを務めてもらいます。
後ろから指示を出してもらいながら少しずつ前進しますが、やはり、本職の指導員のようにはいきません。
3年経過した今でこそ、お互いにずいぶん慣れてきたので後ろからの指示を信じて歩けますが、初めの頃は、ほとんど喧嘩しながらの歩行の日々でした。
そんな私達のやり取りを聞きながら歩くトリトンも、ものすごく歩きづらかったことでしょう。
あの時は申し訳ないことをしたなと今頃反省しても遅すぎて、トリトンにはなんのことを言ってるんだかわけわかりませんよね。
でも、初めてトリトンと家に帰った時のこと、私は今でもくっきりと覚えています。
家に帰る途中、一カ所だけ川にかかる木の橋を渡ります。
この日の天候は雨、しかも、未明から降り続いているため川の水位も高く、流れもとても速いものでした。
トリトンにとって、そんな不気味な音や景色、今まで経験したことはなかったのでしょう。
「こんな恐ろしいところ歩けるわけないじゃないか、一体なんで僕はこんなところに連れてこられたんだろう?」
そんな声が聞えてきそうな怯えた態度、思わず後ろに飛び退いてしまうではありませんか。
そんな態度に、トリトンと同じ目線に姿勢を低くし、私は彼を一生懸命なだめたものです。
その効き目があったかどうかはわかりませんが、なんとかその橋を渡りきり無事にわが家に到着したのです。
二度目からは、なんの抵抗もなく渡ってくれたその橋、今でもそこを通る度にその日の光景を思い出しては懐かしんでいます。
家の玄関の外では、トリトンの帰りを心配して、今は亡き私の奥さんの母が待ちきれない様子でソワソワ、ウロウロ。
濡れたトリトンのレインコートや体、そして私自身の体をタオルで拭き室内へ。
ここでもトリトンは落ち着かない様子、すべての匂いを嗅ぎ取るように大きな鼻息を何度も何度も繰り返し、今度はどこに連れてこられたのか、それはそれは不安そうな態度をみせていました。
リビングに移動し、トリトンのために用意しておいたハウスに連れていき、そんな彼の不安を少しでも取り除く努力もしました。
時の流れと共に、私、家族、そして、トリトンも徐々に環境に慣れ、今ではトリトンが中心となり、わが家を温かく包み込む大黒柱のような役目を果たしてくれています。
昨年の秋、ふとした切っ掛けでトリトンの飼育奉仕をしてくださったご家族をご存じの方とお会いする機会に恵まれ、その方のご尽力によって私達は直接連絡をとれるようになりました。
初めていただいたメールの内容に私は胸が熱くなりました。
銀座で行なわれた卒業試験に飼育奉仕の方がいらしていたことは、アイメイト許可証を手渡された時に理事長からうかがっていましたが、直接その時のお話しをメールで知り、私の愚かさに愕然としたものです。
アイメイト協会から連絡を受け取った飼育奉仕の方(ここではBさんと記させていただきます)は、お子さんを伴いテストが行なわれる銀座に。
ロクシタンが入っている銀座シルクビルの横から私とトリトンが歩く姿をご覧になっていたそうです。
横断歩道で停止するトリトンを見て感動されたこと、カレーレストラン“ナイル”の2階で昼食を摂っている時は、1階のフロアで食事をされていたこと、帰り道、地下鉄に入る私達を迷惑がかからないようにと遠くから見送ってくださったこと、その時、トリトンと目が合ったけれど、完全に無視して動揺することなく私と立派に歩いていたこと、トリトンと私の心が一つになったのだと思って誇らしく感じていらしたことなどなどがつづられていました。
その後、トリトンが今どのように過ごしているのだろうか心配で、ネットの検索ボックスに「トリトン」と入れてみたりしたそうです。
でも、私は自らの知識不足、努力不足からトリトンに関するブログやホームページを作っていませんでしたから、「トリトン」の用語にヒットするアイメイトのページなど出てくるはずもありません。
いただいたそのメールを読み終え、私は冷水を浴びたような感覚に襲われ、自らの過ちに気付かされました。
“トリトンと歩む道”の立ち上げの大きな切っ掛けを作ってくださったBさんには、あらためてお詫びし、同時に御礼申し上げます。
また、この“訓練日誌”の掲載の踏切に際し、私の背中を押してくれた、いつも温かいコメントをくださるOさんに厚く御礼申し上げます。
そして、私がアイメイトと歩くためにたくさんのことをご教示くださったアイメイト協会、ならびにスタッフの皆さん、できの悪い生徒の私を担当しなければならなかったSさんに心より御礼申し上げます。
トリトンを通して知り合いになった地域のケーブルテレビのKさんという女性に先日無沙汰をお詫びするメールを出しました。
そのメールの中に“トリトンと歩む道”のブログもしっかりと宣伝させてもらいました。
後日、返信メールをいただきました。
その中に書かれていた内容で非常に印象に残る記述がありました。
以前、Kさんも仕事の関係でブログを立ち上げたそうです。
最初の頃は読者の人数に一喜一憂していたそうですが、ある程度記事がまとまってくると、自分にとっていい記録になっているなと感じたそうです。
私は今でも読者数を気にするひ弱なところから脱出できていませんが、確かに自分にとってのいい記録であり、これは一つの財産かもと感じ始めています。
貴重なアドバイスをくださったKさんにも、この場をお借りし御礼申し上げます。
協会で受けた歩行指導、ユーザーそれぞれがそれぞれの異なったドラマを経験していることでしょう。
ドスコイノブの訓練日誌は以上です。
皆さんの感想をお待ちしています。
最後になりますが、現在3頭目のアイメイトユーザーの先輩、松井進さんが今年1月に出版した著書をご紹介し失礼いたします。
書名:盲導犬の訓練ってどうするの? 視覚障害当事者の歩行訓練体験記
著者:松井 進
発行・発売:生活書院
  〒160-0008 東京都新宿区三栄町17-2 木原ビル303
  TEL03-3226-1203 
  FAX03-3226-1204 
  mail:info@seikatsushoin.com
判型:四六判並製/144頁
定価:1470円(税込)
ISBN978−4−903690−64-3
本書の概要
本書の中で、私たちアイメイトの使用者が犬たちとどのように出会い、どうやって信頼関係を築いているのか、その軌跡をご紹介したいと思います。
 私にとってアイメイトは目の代わりであり、身体の一部ともいえる存在です。彼らの献身的な協力のおかげで、私は仕事を持って経済的に自立し、ボランティア活動をし、家庭生活を営み、余暇を楽しみ、社会に参加することができるのです。
なお、念のため申し添えますが、これはあくまでも私の個人的な体験談であり、すべての視覚障害者に共通するものではありません。
最後に、私の取るに足らない体験が、盲導犬と人との関係についての理解を深める一助となれば幸いです。
posted by ドスコイノブ at 09:00| Comment(4) | TrackBack(0) | トリトンとの日々