2011年02月07日

マナー “アイメイトを美しく” 5


今回の記事、アイメイトの衛生面とは直接関係するものではありませんが、前回までの抜け毛予防の流れを受けての内容となります。
【ブルブル】
“シャンプー”の記事中に少し登場してきたこの“ブルブル”の動作、抜け毛予防と言うよりも毛の飛散防止と表現した方が的を射ているかもしれません。
どちらかと言うと、ラブラドールのように耳が垂れている犬に多い行動なのかなと個人的に感じているのですが、首を左右に大きく数回振る動作をしばしば行ないます。しかもものすごいスピードで、ひどい時には全身をくねらせるように。
この動作、私達は“ブルブル”と呼んでいます。どのような場合に“ブルブル”するのでしょうか。
特にシャンプーや雨に濡れた時など、水分を外に発散させる目的で頻繁に行ないます。
その他にも、少し長い時間伏せた状態から解放された時に、または、外耳炎など耳に病変が存在している場合などに“ブルブル”するケースが多いように感じます。
飲食店、電車内など人が多く集まる場所でこの“ブルブル”が炸裂すると、いくら洋服を着ていても細かな毛が広い範囲に飛散してしまい周りの人に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
しかも、このような場所を利用する際は伏せて待ってもらうことが多いため、その姿勢から解放されるとどうしてもやりたくなるようです。
これを防止するために少しの間トリトンには“ブルブル”攻撃を延期してもらっています。
“ブルブル”防止、その方法は使用者それぞれによって違いはあると思いますが、ほとんどの方は周囲の人々に気を配りなんらかのコマンドで自らのパートナーをコントロールしていると思います。
私とトリトンとの間での命令コマンドは
「ノーブル」です。
ここでは、レストランで食事をした場合を例にとってお話しします。
テーブル上にはたくさんのおいしそうな料理が並んでいます。
テーブルの下ではトリトンがおとなしくダウンの姿勢で待っています。
次々に運ばれてくる料理は瞬く間に私のお腹の中に順序よく修まっていきます。
席に落ち着いてから約1時間が経過しました。お腹はいっぱい、もうなにも食べられません。食後のコーヒーも飲み終わり、そろそろ帰ろうかということになりました。
支払い伝票を連れに無理矢理押しつけ、
「ごちそうさまぁ!」と元気な声で感謝の気持ちを表します。
そして、足下に伏せて待ってくれていたトリトンに声をかけました。
「トリトン、帰るよ!」
彼はおもむろに立ち上がり、軽く尻尾を振りながら私の横に並びます。本当ならここでおもいっきり“ブルブル”したいはずですが、少し我慢してねという気持ちをこめて
「ノーブル」と指示を出しました。
会計を済ませている連れの後ろを私達はさりげなく通過しドアを目指します。
「ありがとうございましたぁ!」という美しい女性スタッフの声に見送られながら、お店の外に出たところで、
「ブルブル OK!」とトリトンに声をかけます。
待ってましたとばかりにかれは気持ちよさそうに
『ブルブルブルブルブルブルブル〜』
“ブルブル”を我慢したこと、「ブルブル OK」の指示に瞬時に従ってくれたことがパパは本当に嬉しいよという気持ちをこめて
「ブルブル グーッド!」で大きく賞めてあげます。
ここでやられると困るなという場所を利用する際にとても重宝しているこの“ブルブル防止策”ですが、最初から上手にできたわけではありません。
私の要求がどういうことなのかがトリトンの心に伝わるまで、そして、実際に行動に移せるまで何度も失敗を重ねながら練習しました。
初めの頃はわが家で、続いて仕事場で、そして実際に飲食店や電車内へと徐々に範囲を広げていきました。
“ブルブル”に限らず、こうして欲しい、こうすればいいのか、お互いの気持ちが通じ合った時の瞬間は本当に感動です。まさに、種別の壁を乗り越えて会話を交わしているような実感を抱くなんとも言えない一瞬です。
これで“ブルブル”についてのお話しはおしまいです。
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2011年02月05日

マナー “アイメイトを美しく” 4

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今回もアイメイトに着せている洋服について続きを書かせていただきます。
前回の最後は、洋服をトリトンに着せている本当の理由が他にあるというところまででした。
。こんなことを書いてしまうと、「おまえは、周りの人々に対するマナーがなっていない!アイメイト使用者として失格だ!」と、お叱りを受けてしまうかもしれませんが、ここは私のブログ、あえて正直に書かせていただくことにします。
私は外出時、散歩意外はなるべく洋服を着せています。トリトンの体を汚したくないという理由からです。
もちろん、抜け毛などに対する周りへの気遣いは常に頭の中にあります。だからこそ、日々のブラシを手抜きすることなく続けていますし、トリトンをいつどこに出しても恥ずかしくない状態に保っているという自負のようなものもあります。
外出する場合、どうしてもアイメイトを伏せて待たせることが多くなります。
それは、電車に乗車している間、飲食店で食事をしている間であり、または、駅のホーム上や路上ということもしばしばです。
ジュースなどの液体が、水たまりが、砂埃が、その他の何かがトリトンの伏せた場所にあれば彼の体が汚れてしまうことになります。
見えていれば、そこが汚れているのかそうでないのかを判断できますが、見えない私が知るためには手のひらでその場を探る必要があります。
でも、そのような行為は、傍から見てもあまり格好のいいものではないでしょう。
そのようなことを未然に防ぐためにも最初から洋服を着せると言うのが私の本来の目的なのです。
トリトンの体が汚れない、その上、抜け毛予防にも効果があり周囲に迷惑をかけない、これぞまさしく一石二鳥という言葉がぴったり当てはまる事例の一つと言えるのではないでしょうか。
ただ、アイメイトが働く環境は、使用者の生活リズムや仕事、暮す地域により自ずと異なってくるのは当然で、上に記したことは、あくまでも私の事例をご紹介したに過ぎません。
また、アイメイトの体質も様々で、皮膚が弱く洋服を着ることで状態を悪化させてしまうケースもあり、必ず服を着させるべきであると決めつけてしまうことに違和感を抱くこともあります。
更に、夏場の外出に至っては、アイメイトの体調を十分年頭におきながら使用者自らが服の着用の是非を考慮しなければいけません。
一般的には、直射日光を避けるために、風通しが良く、体温を外に発散できるような素材の服を着せた方が望ましいと聞いています。
ダスターコート(マナーコート)についての意義と役割についてお話しを勧めてきましたが、これに関連し雨の外出時に着用させる洋服についても少し触れておくことにします。
ダスターコートと同じ形で立派なレインコートも用意されています。
素材は、ダスターコートの綿に対し、レインコートはナイロン製、雨の体内への侵入を完璧にシャットアウトしてくれる優れものです。
レインコートについた水滴や泥はね、トリトンの顔や尻尾、肉球を乾いたタオルで十分拭き取ってから室内に入ればOK、車内や床を汚す心配もありません。
長くなりましたが、アイメイトの洋服についてのお話しは以上です。
ここで再度お断りさせていただきますが、このブログにご紹介している記事は、あくまでも私個人としての考えであり、それに伴う行動で、すべてのアイメイト(盲導犬)使用者が同じ考えをもち行動しているわけではないことをご承知ください。
もちろん、私の思いを他の使用者の皆さんに押しつけるような大それた気持ちは微塵もないことも合わせて申し添えておきます。
マナーに関しても使用者それぞれに異なった考えと行動の元で社会参加を果たしており、それらの一つ一つの小さな積み重ねが、アイメイトや盲導犬の正しい知識を世に送り出し、周囲からの理解に大きく貢献しているものと信じています。
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2011年02月03日

マナー “アイメイトを美しく” 3

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過去2回の記事、ブラッシングとシャンプーで犬を清潔にし抜け毛や匂いを抑え、周囲に気を配るということをお話しさせていただきました。
今回は、抜け毛予防対策の一環として普段心がけていることを少し違う角度からお話しさせてもらいます。
【ダスターコート(マナーコート)】
これは、アイメイトに着せる洋服のことです。
画像でもおわかりいただけると思いますが、首から上、そして尻尾、手足の先以外はアイメイトの体が露出していません。
この洋服は、アイメイト協会後援会のボランティアの方が犬の体に会わせて寸法を計測して作ってくださるもので、いわゆるオーダーメイドと呼ばれる代物です。
考えてみれば、今まで私自身オーダーメイドの服など持ち合わせたことは皆無に等しく、少しばかり、いや、かなりトリトンがうらやましくなることもあります。
でも、視覚障害者の安全な歩行を担うアイメイト、体に合わない服では歩きにくくて、その能力をフルに発揮できず誘導にも支障が生じてしまいますよね。
さて、ここでクイズです。三択でいきましょう!
このような洋服、なぜアイメイトに着せる必要があるのでしょうか?
1.可愛く見せて周りの人の警戒心をなくすため
2.抜け毛予防。飲食店や犬嫌いな人への配慮
3.寒いから
さあ、正解は何番でしょうか?
もちろん皆さんはすぐにおわかりいただけたと思います。何しろ、この記事の冒頭に答えが書いてありますからね(笑)
実は、このクイズ、昨年12月に地元の中学にアイメイトのお話しをさせていただいた際にも出題したものなんです。
拍手の数でどの答えが多いかを判断させてもらいましたが、なんと、3番が最も多かったんですよ。
この反応には正直私も驚いた記憶があります。まあ、季節的にも寒い時期だったので、無理もないかなあと、あとになってから納得したものです。
実際、ペットとして犬を飼っている方の中には、愛犬が寒いだろうと洋服を着せるというお話しをうかがうこともありますから、一般的な認識として、そのような答えに落ち着くのも頷けます。
アイメイトの場合は、先にも述べたとおり、第一の目的は抜け毛予防、第二に犬嫌いの人への配慮を考慮して、このような露出度の低い洋服を着せています。
特に、病院や飲食店など衛生面を重視するような場所、電車やバスなど人と接触する機会が多い場所などを利用する際には洋服の着用を心がけています。
本来であれば、日々の手入れでアイメイトの体は十分清潔なので、わざわざ洋服を着せる必要はありませんが、毎日丁寧にブラシをかけていることなどは使用者にしか知り得ない事実というのも現状です。
実を言いますと、私がトリトンに洋服を着せる本当の理由は他にあるんです。
が、今回はこの辺で一区切り、続きは次回に持ち越しさせていただきます。
                              つづく
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2011年02月01日

マナー “アイメイトを美しく” 2

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前回のブラッシングに関連し、今回は、シャンプーについてご紹介します。
日々のブラシに加え、月に一度くらいのペースでシャンプーを行ないます。
これとは別に、少し匂いが気になるなあと感じた時には以前ご紹介したベビーパウダーを用いたドライシャンプーも併用しています。
ドスコイ家のお正月 2011 前編
を参照していただければと思います。
【シャンプー】
4週間〜6週間に一度の割合で、私の仕事が休みの日に風呂場でシャンプーをします。
毎日のブラシでトリトンは十分綺麗だと思いますが、皮脂や垢が目立つようになる頃を目安に、アイメイト協会で勧められている薬用シャンプーを使ってピッカピカに磨き上げます。
風呂場は、余分なものは予め片付け、なるべく広い状態にしておきます。
まずは、耳に水が入らないようにトリトンに脱脂綿で耳栓をし、チェーンカラーも外し産まれたままの裸ん坊にします。
5倍〜7倍に稀釈したシャンプーの容器をもって二人は浴室という戦場に向かいます。
きっちりとドアを閉め、私はシャワーの栓をおもむろに捻り適度な温かさにになるのを待ちます。
トリトンはというと、すでに顔は出口を向いて誰かに救助を依頼しているかのようです。
それを無視して私は右手にシャワーのノズルを握り、水分を染みこませるように毛を逆立てながら、尻尾の方から上に向かって徐々に濡らしていきます。
次に、その部分にシャンプー液を適量垂らし、毛並みに逆らうようにゴシゴシと洗い始めます。
爪を立てないよう気をつけながら指の腹を駆使し、そして、逃げ惑うトリトンを追いかけ回しながら中腰の姿勢で一生懸命彼を洗います。
トリトンは、それに対して反撃するかのように首を左右に大きく振るブルブル攻撃で私に対抗してきます。
すでにこの時点で風呂場はあちらこちらにシャンプーが飛散しまくっている状態です。
そんなのに負けていられません。次に首から上にお湯をかけ、同じように洗う手を休めることなく洗い続ける私です。
数回のブルブル攻撃で私の体もびしょ濡れです。
一通り洗い終えたあとは、シャワーでシャンプー液の成分が残らないように十分に流します。
この作業をもう一度繰り返した後、数枚の乾いたバスタオルである程度水分を拭き取ります。
さあ、今度は浴室から場所を廊下に移動しドライヤーで毛を完全に乾かす作業の始まりです。
家庭用のドライヤーですから、パワーが物足りず、かなりの時間を要してしまいます。
ダブルコートのラブラドールレトリバー、乾いたかなと思っても、いつまでも水分がしつこいくらいに残っています。
何しろ全身毛だらけですから、時間がかかるのは致し方ないことですね。
最後に毛ブラシで毛並みを整えて終了、トリトンにはリビングで休んでもらいます。
私も一緒に一休みしたいところですが、まだやることが残っています。
ドライヤーをかけた周辺を重点に浴室の手前まで掃除機をかけます。
それに引き続き、戦場と化した浴室の掃除です。シャンプーや毛がかなり広範囲にわたって飛び散っているので、背伸びをしたりしゃがみ込んだりしながらブラシを使って綺麗にします。
こうしてトリトン様のシャンプータイムがやっとのこと終わりを告げるのです。ここまで要した時間は約2時間、季節が冬の今でも汗をかいてしまうのですから、夏場のそれは想像を絶するほどの重労働と言えるでしょう。
でも、シャンプー後のトリトンは、まるで大きなぬいぐるみのようにフワフワな仕上がり、この体を撫で回しているうちに、先ほどまでの労働による疲労が一瞬にして癒されていくのを感じます。
このように、日々のブラシ、シャンプー、口臭を防ぐ役割も果たす歯磨きなどを遂行することでアイメイトを常に清潔に保つことが周囲に向けての最低限のマナーと感じていますし、何より、トリトンが常に綺麗でいることは私の自慢の一つでもあり、自分自身を満足させる一つの要因になっているのも事実です。
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2011年01月30日

マナー “アイメイトを美しく” 1”

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アイメイト使用者としての周囲へ向けてのマナーについて、今回から私なりに注意し遂行している事柄を具体的にご紹介させていただきます。
私が考える使用者としての“マナー”は、基本的に周囲へ向けての気遣いと心配りであり、これらを遂行することによりフィードバックという形で周囲からの盲導犬、そして使用者自身に対する理解を得られ、社会におけるノーマライゼーションの第一歩として寄与できるのではという思いも含まれています。
協会で訓練を受けていた際に学んだこと、これらはすべてのアイメイト使用者が実際の社会生活に参加する上で欠かしてはならない最低限のマナーだと感じています。
このブログ内で、どのようにわかりやすく書いていけばいいのだろうと、私の少ない頭で考えているのですが、なかなかいいアイディアが浮かんできません。
うーん、そうですねえ、まず、アイメイトの衛生面と健康管理について一つずつ掲げていこうかなあと思いますがいかがでしょうか?
以前の記事と重複するところが随所に現われますが、まあ、復習と言うことでご勘弁願えれば幸いです。
まず、アイメイトの衛生面についてお話しを進めさせていただきます。
常にアイメイトを清潔に保つこと、これは何が何でも守らなければならない最重要課題です。
では、具体的にどのようなことに気をつけアイメイトを清潔に保てばいいのでしょうか。
【ブラッシング】
第一にあげられるのがアイメイトにブラシをかけることです。
基本的に毎日行い、1年に訪れる換毛期には、なお一層丁寧に行なう必要があります。
ブラシをかけることによって、外出時の抜け毛を最低限に抑え、同時に犬特有の匂いも抑制することが十分期待できます。
飲食店や交通機関などを利用する際、抜け毛や匂いを抑えることで、アイメイトや盲導犬に対して良い印象を残すことができますし、次に同じ場所を利用する違う使用者が快く受け入れてもらう助けになることは想像に難くありません。
私が使用しているブラシは、ゴムブラシ、毛ブラシ、ファーミネーターの3種類です。
まずはゴムブラシの登場です。高さ20センチほどの台に前足だけ乗ってもらい、毛並みとは逆の方向に向けて、ちょうど背中をかいてあげるように少し強めの力を加えて行ないます。
犬は自分の後ろ足を使って体を小刻みにかくことがあります。どれくらいの強さを加えているのかと、その部分に手をもっていくことがありますが、想像以上に強いことに気がつきます。
トリトンもゴムブラシをかけてもらっている時はなんとも言えない気持ちよさにうっとりしているのが私にもわかります。
背中をブラシしている時、自分でかいているかのように後ろ足で空中をかいている仕草は、なんとも微笑ましい光景です。
次にファーミネーター、これは、無駄なアンダーコートの除去に威力を発揮する優れものです。
形はT字で、長い方の柄を握り、ちょうどバリカンのような刃の部分を毛並みに沿って優しくスライドさせます。
ゴムブラシのように強い力を加えるのは禁物、デリケートな肌を傷つけてしまわないよう十分気をつけながら行ないます。
時期によって違いますが、面白いくらいフワフワのアンダーコートがたくさん抜けます。
次にお湯でしぼったタオルで全身を拭いてあげます。ちなみに、私は顔、体、肉球用に3枚のタオルを使用しています。
最後に毛ブラシをつかって毛並みを整えて終了です。
ここまでで45分前後、犬も新陳代謝が盛んだということがブラシを終えた床を触れば一目瞭然、手のひらで集めた毛のなんと多いこと、その中には垢もたくさん混じっています。
このように、毎日きちんとブラシをかけていれば、匂いはほとんど気になりませんし、抜け毛を抑えることも十分可能です。
外出時、他人の洋服に毛がついてしまう、カーペットなどの床を毛だらけにする、犬アレルギーの人に迷惑をかけてしまうなどの防止策としてブラッシングは欠かすことのできないマナーの基本です。
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2011年01月28日

マナー “まえがき”

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今回から少しの間、アイメイト使用者としての周囲へ向けてのマナーに関するお話しをさせていただきます。
実は先日、アイメイト協会同窓会(アイメイト使用者の会)の主催で、“アイメイト使用者としてのマナー”というテーマで研修会が行なわれました。
会場は懐かしのアイメイト協会3階の会議室です。
約2時間という短い間でしたが、使用者の代表として3名の方の体験談、協会からは歩行指導員によるお話し、その後は、出席者による意見交換と、われわれアイメイト使用者にとって実りあるものとなりました。
残念ながら他の重要な仕事で出席が叶わなかった協会の理事長ですが、われわれに宛てたコメントを職員に託してくださいました。研修会の冒頭で代読していただきましたが、、個人的にはこの言葉がすべてを物語っているのではと思うほどの重みを感じました。
協会の了解を頂戴していますので、下記にそのコメントを掲載させていただきます。
尚、私の文章と混同しないよう、コメントの初めと終わりを【】で区切らせていただくことにします。
【何事にも終着点はありません。
それは、アイメイトとの生活にも同じことが言えます。
しかし、人間は弱いもので、どうしても楽な方、手抜きの方向に流れやすいものです。
また、自己責任の範疇のことを周囲や社会のせいにして、後ろ向きな思考をしやすいものでもあります。
しかし、本日あらためてアイメイトと生活していく上での社会との共存、マナーについて考える時間をもち、あらためるべき点に気付くことができれば、これは、協会にとっても皆さんにとっても大きな進歩です。
マナーは永遠の課題です。使用者の皆さんが十二分に配慮をして、どこからも後ろ指を指されることのないようにがんばってまいりましょう!
もちろん、協会は使用者の皆さんと固くスクラムを組んで進んでまいります。
最後になりますが、やがて来たる春を前に、皆様の益々のご健康をお祈りして簡単ではございますが、挨拶とさせていただきます。】
現在では盲導犬やアイメイトに対する一般の認識もかなり高くなっており、交通機関、公共の施設、病院、ホテルなどの宿泊施設、レストランなどの飲食店等々、受け入れ体制が大分整ってきました。
平成14年には身体障害者補助犬法も施行、平成19年に一部改正が行なわれ、補助犬を伴っての社会参加に果たす役割の大きな一助となっています。
しかし、一方では盲導犬同伴での入店拒否も未だに散見され、使用者それぞれが自ら努力し理解を求めるべく日々を送っているのも現状です。
各地方自治体ではそのような入店拒否などに対応すべく、補助犬相談窓口が設置され、その店に対して直接行政指導を行なう場合もあります。
でも、私達盲導犬使用者、ここでもう一度立ち止まり、自分自身を見つめ直す必要はないのでしょうか?
ただ単に補助犬法を水戸黄門の印籠の如く振りかざせば問題の解決に繋がると安易に考えていいのでしょうか?
決してそんなことがあっていいはずはない、私はそう思いますし、大多数の使用者も同じ意見を有しているからこそ、今回のような企画で研修会が開催されたのだと思います。
実際、当日話されたことは、下記に記すような内容が大部分を占めていました。
現在の恵まれた環境は、先人の盲導犬使用者達が歩み、築き上げたであろう、気の遠くなるほどの地道な周囲への働きかけの上に成り立っていることを忘れてはなりません。
そのためにも、いま一度原点に戻り、自分のアイメイトや盲導犬がどこに出しても恥ずかしくないと言える状態を常に保持し続けることの重要性を再確認する必要があるのです。
もちろん、これらは私自身にも当てはまることであり、今回の研修会を通して学んだことは常に胸の中にとどめ遂行していかねばと叱咤激励しています。
次回からは数回にわたり、私なりに注意している周囲へ向けての具体的なマナーについて話を進めていきたいと思いますので、「そんなのつまんなーい!」などとおっしゃらず、お付き合い願えれば幸いです。
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2011年01月22日

車道回避 4

今回の”車道回避”、まだ終わりませんね。
「もう飽きちゃったよ」
という声が世界中から聞えてきそうですが、そんな言葉に私は負けていられません。
アイメイト歩行がどれだけ計算し尽くされた緻密なものなのか、視覚障害者とアイメイトが安全に歩くということがどのようなことなのかを理解してもらうためならば、例え火の中、水の中に放り出されようが毅然とした態度で立ち向かうのがアイメイトユーザーとしての誇り…
あららら、かなり大げさになってしまいました。ごめんなさい。
えーと、どこから書けばいいのでしょうか?そうそう、行きは良い良い、帰りは大変というところでしたね。
車道を左に見ながら歩道上の障害物を回避する、でも、これがアイメイト歩行にとって実に難しいお仕事だというところまでが前回の記事でした。
私達の目の前にワゴン車があります。この時点で車道は左側に位置しています。さあ、私がトリトンに出した最初の指示はなんでしょうか?
「ゴー レフトコーナー」
そうです、車道に下りるための指示になりますね。トリトンが左に角度を変えて段差で停止しました。
「コーナー グッド」で彼を賞め、私は車道を走る車の流れに全神経を集中させます。
私達が進む右側からの車の流れが途切れたようです。
「ゴー ライト」
段差を下りた私達は右に進路を変え歩き出しました。
「ライト グッド」でトリトンを賞めたあと、すかさず
「ライトコーナー! ライトコーナー!」
右の段差を探すよう、少ししつこいくらい、そして強い口調で指示を出します。
なぜでしょうか?どうして、そんなに繰り返し同じ指示を出すのでしょうか?しかも強い言い方で?
現在の状況は以下の通りです。
車道の右に位置する歩道、その歩道上いっぱいに障害物があるために、一時的に車道に下りて右に進む私とトリトン、実はこの時点で二人は右側通行をしていることになります。しかも車道を。
以前の記事でもお話ししましたが、アイメイト歩行の原則は左側通行、これは、道路交通法で許可されているというものでした。
アイメイトは左に寄って歩くことを常とし、右にずれ込んでしまった場合は
「よって」の指示で修正しています。
しかし、現在はほんの数メートルとは言え車道の右側を歩いており、強い声符と視符で右を指示しなければ、真面目なアイメイトのことです、左に寄らなければと車道を横断するように歩いてしまう恐れがあります。それを阻止するために右の段差を強調して指示を出す必要があるのです。
段差を下りて右に進み、ワゴン車をやり過ごしたのち再び右の歩道に上がる単純な行程、晴眼者の方にとっては朝飯前、昼飯後のお茶の時間と言った簡単なものでしょうが、耳と空気の流れ、そしてアイメイトの力を借りながら歩く私達全盲の視覚障害者にしてみれば、大切なディナーを目前にしたような緊張感を感じていることをご承知いただければと思います。
数メートルを歩いた後、無事にトリトンが右の段差で停止してくれました。
「コーナー グーッド グッド!」
大きく彼を賞め、
「ゴー」で歩道上に上がります。
私は、その場にしゃがみ込み、トリトンを何度も褒め称え、最大限の喜びを表します。
「さあ、おうちに帰ろう!」
残り90メートルの直線をあっという間に歩き去るドスコイノブ&トリトンです。
「ママー!ただいまー、買ってきたよ!」
こうしてドスコイノブの”はじめてのおつかい”は静かに幕を下ろすのでした♪♪
これで”車道回避”は終わりです。おつかれ様でした!
そして、アイメイトの基本となるお仕事の紹介も本日で終わりです。
もう大丈夫、皆さん安心してください。
「なんのこと?」
万が一、百万が一、皆さんが見えなくなってしまったとしても、私のブログを初めから読んでくださっていたならば、アイメイトと歩くための正しい知識は蓄えられたことになります。あとは実践あるのみ!なんちゃって…
そんなことにならないよう、皆さん、日頃より目を労り大切にお使いくださいね。
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2011年01月21日

車道回避 3

話がなかなか前に進まない今回の”車道回避”、しかも、読んでくださっている皆さんにとっては、かなり理解に苦しむ内容になっているかもしれないことをお詫びしつつ続きを書かせていただきます。
歩道いっぱいに停車しているワゴン車をよけるために、一度、車道に下りる目的で右の段差につけたところまでが前回のお話しです。
私達は車道を向いて立っています。耳に神経を集中し、右からの車が途切れるのを待ちます。
そして、数十秒後、「今がチャンス!」の場面を逃さず次の指示をトリトンに出します。
「ゴー レフト」
段差を下りて車道に出た私達は先ほどのワゴン車をよけるために左に数メートル歩きます。
「レフト グッド」で賞めた後、すかさず、
「レフト コーナー」と、身振り(視符)を加えながら少し強い口調で指示を出します。
ハーネスのハンドルの角度でトリトンが左の段差に前足をかけたことがわかります。
「レフトコーナー グッド!」で大きく賞め、
「ゴー」の指示で素早く歩道に上がります。
この時点で先ほどのワゴン車は私達のすぐ左に位置していることになります。
無事に障害物の回避に成功した私達、ここで初めてホッと一息です。
焼き鳥屋さんまではほんの5メートル、長い100メートルの私達の旅が一段落した瞬間です。
このように、歩道に置かれている障害物に対して、まず私達は通れる隙間がないかを確認する作業を試みます。運悪く通れない場合のみ車道に下りて回避しますが、車の流れを注意深く観察しながら行動することを忘れてはなりません。
焼き鳥屋さんのおばさんから熱々の商品を受け取り、シワシワになってしまった千円札を支払い、さあ、ママの待つおうちに帰ります。
「ゴー」
来た道を視符で示し、トリトンに前進するよう指示を出しました。が、またもや彼は歩みを止め私に顔を向けて通れないことを訴えています。その様子を受け、手を前方に伸ばしてみると、
「おやっ?おかしいな、さっきの車がまだ止まってるぞ」
そう言えば、焼き鳥屋さんのおばさんとお話ししているおじさんがいて、私達が買い物を済ませたあともその場を離れていませんでした。
仕方ありません。再び、車道に下りてワゴン車を回避しなければおうちに帰れない私達、トリトンと力を合わせてもう一がんばりです。
来た時と同じように帰ればいいのですが、先ほどとは大きく異なる点が一つあります。
今度は車道が左側に位置しているということです。
「だからなんなの?さっきと同じようにさっさと帰ればいいじゃないの」
と思われる方がいらっしゃると思いますが、ところがスッとコドッコイ、そうは問屋が卸さないというのがアイメイト歩行です。
                              つづく
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2011年01月20日

車道回避 2

引き続き、”車道回避”のお話しです。
前回は、車道を右に見て進むか、左に見て進むかで歩き方が違うということまでお伝えしました。
では、どのように違うのか、具体的な例を取り上げてお話しを進めていくことにしましょう。
車道を走る車の音を右に聞きながら歩道を直進し、100メートルほど先にある「安くておいしい」と評判の焼き鳥を買いに行き、180度方向転換し、同じ歩道を歩いて戻って来るという場面を想定し”車道回避”をご説明します。
実は私、肉が好きではありません。しかも、中でも鳥は大の苦手、頼まれて仕方なく買いに行かされました。でも、焼き鳥のあの香ばしい匂いは大好きというわけのわからないドスコイノブの”はじめてのおつかい♪”です。
往復で200メートル、しかも直線上の歩道を行って帰るのですから、トリトンにとっては朝飯前の仕事のはずでした。
ズボンの右のポケットにはママから手渡された千円札が入っています。1本50円の焼き鳥を20本、「たれ」と「しお」を10本ずつ買ってきなさいと言われています。
お金をなくしたら大変、ママゴン怪獣にたくさん叱られてしまう!私は何度も何度もポケットに手を忍ばせ、その存在を確認しながら焼き鳥屋さんを目指します。
炭火で焼かれる焼き鳥の香ばしい匂いが近づいてまいりました。あと10メートルで到着です。
と、その瞬間、どうしたのでしょう?トリトンが静かに止まるではありませんか。
「あれ〜?おかしいなあ」
なぜトリトンが停止したのか、私には皆目見当がつきません。とりあえず、
「ゴー」で、前に進むよう指示を出してみました。
それに対し、方向を少し左に変え前を目指そうとするトリトンですが、かなりぎこちない動きです。
「ん?前に何かあるのかな?」
前方に圧迫感を感じた私は、恐る恐る右手を伸ばしてみました。
指先に冷たく堅いものが触れ、続いて、手のひらでそれが車だということを認識していました。しかも、背の高いワゴン車、幅もありそうです。
きっと、私と同じように、焼き鳥を買いにきたお客さんでしょう。
そうなんです、トリトンは、歩道上いっぱいに乗り上げて停車している車を目の当たりにして、二人分が通れるような隙間がないだろうか、どのように回避しようか彼なりに試行錯誤していたのです。
原因がわかればなーんにも怖くはありません。
「車があって行けなかったんだね」と、トリトンを労い、私は改めて新しい指示を出しました。
「ゴー ライトコーナー「
これは、一端車道に下りる目的で、右の段差につかせるための指示になります。
右に方向を変え、少しだけ歩いたところでトリトンが止まりました。
右足で段差を確認し、
「コーナー グッド」で彼を賞めてあげます。
この時点で、私達は車道を向いて立っていることになります。
さあ、ここからは十分注意を払いながらの二人の共同作業となります。
                              つづく
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2011年01月19日

車道回避 1

協会で学んだアイメイトの具体的なお仕事としては今回の”車道回避”が最後になります。
このように「最後」という言葉を使用すると、一抹の淋しさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
でも、まだこのブログは続けるつもりでおります。
アイメイトとしての基本的なお仕事が最後というだけで、これから先も普段の出来事を交えながら、訓練中に感じたこと、、皆さんが日常の生活でアイメイトや盲導犬を見かけた際に守っていただきたいこと、使用者として私なりに実際に遂行している周囲へ向けてのマナーなど、お伝えしたいことがたくさんありますので、もうしばらくの間お付き合い願えれば幸いです。
さて、今回のタイトルにも記した”車道回避”について、お話しを進めていくことにしましょう。
このお仕事もアイメイトにとっては難易度の高いもので、実際、この訓練を受けたのも卒業を目前とした最終週、銀座で行なわれる卒業試験の前日のことでした。
この”車道回避”、歩道上いっぱいに置かれた障害物を車道に下りて回避し、その後再び歩道に戻るというものです。
具体的には、次のような場合が想定されます。
歩道上に乗り上げて停車しているトラックが原因しアイメイトとユーザー二人分の幅が少なく通過できない時、あるいは、歩道の一部が工事中で通れない時などが考えられます。
その場合、一度車道に下りてそれらの障害物が置かれている距離を慎重に歩いたのち再び歩道に上るというかなり難しいお仕事であり、なおかつ危険を伴うものです。
”車道回避”という名目のお仕事ですが、あくまでも歩道を占めている障害物を回避するということであって、車道に回避するという意味ではないことを申し添えておきます。
普段街中を歩いていてこのような場面に遭遇することはさほど多くはありませんが、決して少なくもありません。特に、工事が集中する年度末には頻繁にこのような状況を実際に経験しています。
目的地に向かうためには必ずその場所を通らなければならない場合が多々あります。しかも、周囲には援助を求める人も歩いていないこともしばしばです。
アイメイト協会では、どのような状況におかれても、全盲の視覚障害者とアイメイトが二人で力を合わせて様々な難所をクリアしながら少しずつ前進していくためにも、このような場面を予め想定し、共同訓練の一環として実践しているのです。
では、歩道上を占めている障害物、実際にどのようにして回避するのでしょうか?
ここでお断りしておかなければならないこと、車道の左側の歩道を進むか、逆に、右側の歩道を進むかで歩き方がまったく異なってくることをご承知ください。
                              つづく
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